ママのためのぷち心理学
子育て中のイライラを誰にも話すことなく我慢したり、夫と考えが食い違って口論になりそうなのをぐっとこらえたり、あるいはまた、自分の気持ちを抑え込んで、ニコニコしながら周りの人たちに合わせたり、といったことが積み重なると、ある日、理由もなく怒りが収まらなくなり執拗に子どもを叱ってしまった…、そんな経験はありませんか? 私たちは、毎日の生活の中で、理性を働かせて、意志の力で自分をコントロールしています。もちろんそれは大切なこと。けれども、意志力を使い過ぎると心が消耗して、疲れ果ててしまいます。心理学者のバウマイスターたちは、このことを「自我消耗」と名づけました。
自我消耗については、後の心理学者たちによって、さまざまな実験が行われています。たとえば、難しい課題に我慢して取り組むと、自由に選ぶことのできる2種類のデザートのうち、フルーツサラダよりもチョコレートケーキを選んでしまうことが明らかになっています。他にも、我慢を強いられた後では、通常よりも理性的でなくなる、つまり自分のやりたいようにすることがわかりました。
このように私たちは、自分の気持ちを抑えつけてがんばっていると、あたかもその反動のように、自分を抑えられなくなることがあります。意志力を働かせ過ぎると、一時的に心のブレーキがきかなくなると言うこともできるでしょう。そのため、ふだんなら「もうこれくらいで、やめておこう」というスウィーツの適量をいとも簡単に超えて食べてしまったりするのです。甘党ではなく辛党の人であれば、アルコールを飲み過ぎてしまうということになるでしょう。また、ダイエット中にもかかわらず大食いをする、服やバッグや靴を衝動的に買うといった行動をとってしまい、後から後悔のため息を漏らすかもしれません。
意志を強く持てるように少しずつ自己訓練するのはいいのですが、心が疲れてすり減ってしまうほど我慢を重ねるのは、考えものです。がんばりすぎたなと感じたら、気分転換をはかるなど、自分の心を休めてあげることをお勧めします。意志力は、けっして無尽蔵ではないのですから。
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