ママのためのぷち心理学
このたびの東日本大震災で私たちは、地震・津波という天災の恐ろしさを、いやと言うほど思い知らされました。でも、それだけではありません。災害による被害に加えて、風評、つまり「よくないうわさ」による被害が、さらに追い打ちをかけています。
どんどん尾ひれがついて、人から人へと伝わっていくうわさ。心理学では、これを「流言」と呼びます。うわさは、「デマ」とは異なり、悪意を持って意図的に流されるわけではありませんが、決してあなどれないものです。
1973年に愛知県豊川市で、「豊川信用金庫が危ない(つぶれるかもしれない)」といううわさが流れ、多くの人が預金をおろそうと殺到し、短期間に億単位の預金が引き出されるという事件が起こりました。うわさの発端は、女子高生のたわいない冗談であったと言います。また、同じ年に、オイルショックのため、トイレットペーパーが足りなくなるといううわさが流れ、全国でトイレットペーパーの買い占めが起こりました。こうした過去の出来事は、今回の風評被害や震災直後の買い占め問題などと無関連ではないように見えます。
うわさはなぜ、広がっていくのでしょう?
心理学者のオルポートたちは、うわさの広がりやすさの原因として、2つを挙げています。1つは、その内容が当事者にとって重要であること、他の1つは、その内容についての情報があいまいであることです。確かに、重要な問題であるほど私たちの関心は高まりますから、話題にのぼりやすくなります。また、あいまいな情報には推測が混じりやすいため、歪められて広がっていきます。この2つに、もう1つ加えるならば、うわさの内容が不安を喚起することです。私たちは、不安な気持ちになるほど、誰かとその不安を共有したくなります。
そうした心理が働いて、うわさは広まり歪んでいくことが多いと考えられます。私たちは、こうしたメカニズムを知っておくことで、少し冷静になって考えてみることができるのではないでしょうか。今回のように深刻な状況であればなおのこと、うわさに惑わされず、落ち着いて賢明な判断を下すようにしたいものですね。
Copyright © 2011 Mikihouse child & family research and marketing institute inc. All rights reserved.
この記事にコメントしよう