ママのためのぷち心理学
おなかをすかせた赤ちゃんにミルクを飲ませてあげると、「ごっくんごっくん」と飲み終えた後は満足そうな表情になりますね。空腹を満たしてくれるミルクが赤ちゃんにとって大切なのは言うまでもありませんが、実は、ほかにも忘れてはならないことがあります。
ハーロウという心理学者の興味深い研究をご紹介しましょう。彼はアカゲザルの赤ちゃんを使って、次のような実験をしました。生後すぐに母ザルから引き離された子ザルのために、2種類の「代理ママ」を用意しました。1つは、針金で母ザルをかたどった「針金ママ」。針金ママには哺乳ビンが備わっていて、そこからミルクをもらうことができます。もう1つは、柔らかい布でくるまれた「布製ママ」。こちらのママには哺乳ビンはなく、ミルクはもらえません。このような2体のママを前にして、子ザルがどのような行動を起こすかを、ハーロウは調べました。
すると子ザルは、ミルクを飲むときにだけ針金ママのところに行き、あとの多くの時間は、布製ママに抱きついて過ごしました。また、周囲を探索するためにチョコチョコ動き回っていても、こわそうな虫のおもちゃに出くわすと、あわてて布製ママのところに戻り、しがみつくことによって安心するようでした。
この研究結果から、赤ちゃんがママに愛着を示すのは、ママがミルクをくれるからという単純な理由からだけではないことがわかります。赤ちゃんには生まれつき、特定の相手との温かい接触を求める欲求があり、これを満たしてくれる人が赤ちゃんにとっての「安全基地」になると考えられます。温かく肌触りのいい布製ママはアカゲザルの赤ちゃんにとって、大きな安心感を与えてくれる存在だったのでしょう。
赤ちゃんはミルクだけで育つものではありません。必ずしもママに限りませんが、寂しいときや不安になったとき、いつでも柔らかく温かく抱っこしてもらえる人が欠かせないのです。赤ちゃんが安心して育ち、やがて自立心が芽生えるためにも、子どもたちの接触欲求を十分に満たしてあげたいですね。
Copyright © 2011 Mikihouse child & family research and marketing institute inc. All rights reserved.
この記事にコメントしよう