ドクターニュース
風疹が流行していると報道されています。現時点では、兵庫県、大阪府、東京都、京都府で患者数が多く、近畿地方がやや目立っているようです。今年の患者数は昨年同期の約2倍で、風疹ワクチンを受けたことのない20代から40代の男性での患者が多いのも特徴です。この年代は風疹ワクチンの接種方式が変更された時期にあたり、以前から男性の接種率が低いことが問題とされていました。
日本で1977年から始まった風疹ワクチンは、当初は中学生女子だけに接種していましたが、これでは風疹の流行を抑えることができませんでした。1994年からは1歳以上の男女に接種するようになりましたが、この変更のはざまにあった年代が現在の流行の中心となっています。さらに、2008年からはより確実な免疫をつけるために、麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)による2回接種となっています。
風疹は発熱や発疹を主な症状とするウイルス感染症です。かかってしまったら有効な治療法はありません。症状が3日ほどでなくなることから「三日ばしか」と呼ばれることもありますが、はしかとは全く別の病気ですので、混同しないようにしてください。
一般的には軽い病気と思われていますが、けいれんや意識障害を起こす風疹脳炎や、出血が止まらなくなる血小板減少性紫斑病のような重い合併症を起こすことがあります。
風疹はみずぼうそうやはしかと違い、診察だけで診断をつけるのがむずかしい病気の代表です。溶連菌感染症や他のウイルスによる病気が風疹と間違われていることも多く、小児科医でも診察だけで風疹と診断することはできません。
一番の問題は妊娠初期の妊婦さんが風疹にかかることです。生まれてくる子どもが、目や耳や心臓に障害を持つ「先天性風疹症候群」となる可能性があります。
妊娠している女性が風疹にかかると、へその緒を通じておなかの赤ちゃんに風疹ウイルスが感染することがあります。妊娠初期であればあるほど影響が出やすく、生まれつき眼が見えなかったり、耳が聞こえなかったり、心臓の壁に穴が開いているなどの障害を残すことが知られています。治療法はありません。一般には軽い病気と考えられている風疹は、おなかの赤ちゃんには重大な結果をもたらす病気なのです。
山本おさむさんの「遥かなる甲子園」は、沖縄にあった聾学校野球部の話です。1964年アメリカで風疹が大流行し、米軍基地の多い沖縄でも風疹が大流行しました。そして、1984年から翌年にかけて先天性風疹症候群にかかった赤ちゃんが約500人生まれました。
この子どもたちが中学校に進学する時、1学年のみの県立北城聾学校が作られました。この学校は6年間だけ存在し、彼らの卒業と共に廃校となりました。高校生になった彼らは、高校球児のあこがれである甲子園を目指したいと願い、高野連に加盟申請を出すのですが、聴力障害への無理解ゆえに却下され・・・という話です。映画化もされ、三浦友和さんや萩原聖人さんが出演していました。
風疹はワクチン接種でしか防ぐことはできませんが、おなかの赤ちゃんも妊婦さんも風疹ワクチンを受けられません。妊娠している助成の周りの人がワクチンを受けて、風疹にかからないようにすることが大切です。風疹ワクチンから妊婦さんにうつることはありません。
今までに風疹ワクチン(またはMRワクチン)を受けたことがなく、風疹にかかったことがはっきりしないという50歳未満の人は一日も早く風疹ワクチン(またはMRワクチン)を受けて、確実に風疹を予防しましょう。風疹にかかったことのある人がワクチンを受けてもまったく問題はありません。
予防接種にはその個人を守るというだけでなく、集団における病気の流行を防ぐという意味もあります。風疹ワクチンの一番の目的は社会全体での先天性風疹症候群の予防です。これから生まれてくる赤ちゃんを風疹から守るためにも、ぜひワクチンを受けてください。
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