ドクターニュース
マスコミでも報道されているように、A香港型インフルエンザは5年ぶりの大流行となりました。でも、そろそろピークを越えそうな気配です。
インフルエンザの流行がピークとなる頃に多いのが、高齢者の多い療養施設や病院などで「院内感染で患者が死亡」という報道です。たしかにインフルエンザが流行すると、高齢の方々では肺炎のような合併症を起こして死亡する人が増えてしまいます。糖尿病や心臓病などの基礎疾患がある場合はなおさらです。
しかし、健康な小児にとってインフルエンザはそれほど恐ろしい病気ではありません。「インフルエンザ脳症」という合併症はありますが、非常にまれなものです。当たり前ですが、インフルエンザにかかったからといって、みんなが脳症になるわけではありません。
「インフルエンザかなと思ったら、すぐに医療機関を受診しましょう」というコメントが紹介されることもありますが、いたずらに不安をあおるような報道はやめてほしいといつも思っています。
一方、迅速検査でB型が陽性となり、B型インフルエンザと診断されるお子さんの割合が少しずつ増えてきています。 「インフルエンザ」と同じ名前がついていますが、B型とA香港型はまったく別の病気です。
B型、A香港型で、症状がどのくらい重くなるかはお子さん一人ひとりで違いますが、一般的にはB型インフルエンザの方が症状は軽いという印象を持っています。
B型とA香港型が同じクラス内で同時に流行するということも起こります。同じ日にきょうだいが熱を出してきても、一人はA香港型、一人はB型ということもあります。今シーズンで、すでにA香港型とB型の両方にかかってしまったというお子さんもいます。
せっかくインフルエンザワクチンを接種したのに、インフルエンザにかかってしまったという人も少なくないと思います。今年のワクチンは効かなかったのでしょうか?
インフルエンザワクチンには、A香港型、B型、そして「新型インフルエンザ」と呼ばれていたA型の3種類を予防するようなワクチン株の組み合わせになっています。1本に3種類のワクチンが入っているのです。
しかし、国内で使われている注射のワクチンは、ウイルスが体に入ってくる鼻やのどの粘膜で効きめを発揮するワクチンではありません。「インフルエンザにかかることを確実に予防する」ワクチンではなく、「インフルエンザが重症になることを防ぐ」ワクチンです。
抗インフルエンザ薬を使用しなければ治らないのでは?と心配される保護者もおられます。でも、ふだん健康なお子さんではそんなことはありません。
たしかに抗インフルエンザ薬にはウイルスを増えにくくする働きがありますので、症状を軽くすることが期待できます。でも、タミフルが国内で使用できるようになったのは2001年からです。10年ほど前までは、インフルエンザにかかったら、家の中でおとなしく遊んで、好きなものを食べたり飲んだりするだけだったんですね。
保護者の方々の中には、抗インフルエンザ薬を使わないで様子をみたいとおっしゃる方も少なくありません。インフルエンザですから、5日間くらいはだらだらと熱が続きますが、子どもは意外と機嫌もよく、合併症も起こさず治ってしまいます。
抗インフルエンザ薬が使えるようになって10年経ちましたが、特別な病気のないお子さんの(「新型」ではない)インフルエンザに対する治療方針について、国民全体で改めて考えてみる時期ではないかと感じています。
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