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守ることと経験すること

事故・ケガ 子どもの病気 教えて!ドクター

(2013年 特別編集号 掲載)

子どもの発達と事故への対応

未来を担う子どもたちには、自分で考え注意しながらチャレンジする大人に成長してほしいですね。子どもを事故から守ることはとても大切ですが、一方で危険を感じる力や危険を避けたり克服したりする力を育てることも大切です。

子どもの事故は年齢による特徴があり、幼いから危険なことも多いのですが、幼いためにかえって危険性が少ないこともあります。どの時期にどんな事故が多く、いつごろまで何に注意すればいいのか知っていると、日常生活の注意点と対応策がわかります。また、どの時期にどんな経験をさせたらいいのかわかると、落ち着いて子どもを観察できるようになります。
心身の発達段階をふまえて考えてみましょう。

01. 転倒・転ぶ

子どもは、①身長が低く、頭から倒れても落差が少ない、②足が短く、走る速度が遅い、③体重が軽いなど、転んだときの衝撃は強くありません。

1歳前後から、痛みを経験すると工夫し始めます。お座りで後ろに倒れるとき、少し頭を持ち上げ背中で受けてから頭をつくとか、つまずいた段差を乗り越えるようになります。
3歳ぐらいまでは、転んだとき手が出ず頭から突っ込むので、額や顔の擦り傷や打撲が多い時期です。衝撃は軽いので気にせず体を動かして遊ばせると、転び方がじょうずになります。膝や手をつくようになると、ケガの箇所は顔から手や膝に変わります。手をつくのは腕の骨折がおきにくい転び方です。「じょうずに転んだね」とほめてあげてください。遅くても小学校入学までにこの転び方ができていると、顔面のケガや腕の骨折、永久歯を折るなどの防止になります。

気をつけたいのは、尖った物と床面です。家具の角に注意し、鉛筆やお箸などを持ち歩かないようにしましょう。コンクリートやアスファルトは衝撃が強く、走り回るときは要注意です。公園では、ガラスやプラスチックの破片などをチェックしましょう。

02. 転落

ハイハイの時期は、座卓に乗ったり玄関を降りようとします。大人の膝より少し低い40㎝程度の段差は、子どもなりに上り方や降り方を経験して覚えます。
3~4歳ぐらいでは、ジャングルジムなど自分で登り降りする遊びもさせましょう。階段からの跳び降りをさせると、立体視や立体感覚を培い、自分の力を確認する機会になります。

高層住宅で育つと高層階からの景色を怖がらず小学生でもベランダから身を乗り出すことがあります。自分が目測できる高さから飛び降りる遊びが必要でしょう。
子ども自身が落差に気づかない場合は危険です。生後5ヵ月ごろに動くか寝返りをし始めると、ベビーベッドから落ちないよう注意が必要です。幼児が階段で高いところまで上がった場合は、遠くから呼びかけず、そっと下に回って近づきましょう。ベランダ・吹き抜けの階段・ショッピング施設など、階を超える落差でも子どもは高さに気づかず身を乗り出して危険です。勝手に行かないように注意しましょう。

03. 指をはさむ

10ヵ月ぐらいで好きな引き出し遊びやドアの開け閉めでは、たいてい指をはさみます。でも何回か痛さを経験すると、安全な位置に指を置くようになります。自分の力だけで動かす場合、強い力はかからないので大きな危険はありません。練習に適しています。
重くてきっちり締まる車や玄関のドア、ドアの丁番側、風など子ども以外の力で締まるドアなどは、危険です。手の位置に注意しましょう。

04. 水の事故

2歳以下では、顔が水につかると、そのまま溺れていきます。バケツや洗面器や子ども用プールなどに水を入れて放置しない・残し湯をしない・風呂場に勝手に入れないことなどが大事です。
子どもが大人の目前でドボンと水にはまったら、すぐに抱き上げます。子どもは、たいてい水にはまった数秒間は何もせず、抱き上げた瞬間に泣き出し、水も飲んでいません。お風呂やプール遊びでは、そばに大人が居てすぐ対応すればいいので、子どもの行動に神経を尖らせなくていいです。

05. 誤飲と窒息

2歳前ぐらいまでは何でもすぐに口に入れます。指・オモチャ・紙・本・タオル・布・机・家具など飲み込めない物や害のない物は大丈夫です。2歳半ぐらいには、この行動は減ります。
飲み込んで気管に入る可能性のあるあめ玉・豆類・ピーナッツ・その他直径3.2㎝の円筒に入るサイズの小さな物、毒になるタバコや防虫剤・ホウ酸団子・薬品類、鉛筆・お箸などのとがった物、のどに貼りつくビニールやラップやこんにゃくゼリーなどは危険です。手の届かないところに片 づけておきましょう。
3歳以上では、冷蔵庫や棚を開けて薬などを飲むことがあります。 食べ物や飲み物は必ず大人が与えるようにしましょう。

06. やけど

2歳ぐらいまでは目前にある物に何でも手を出します。タバコの火・カップ麺・ストーブ・炊飯器の蒸気・ポット・熱い食べ物・コンロのお鍋などは手が届かないようにしましょう。チャイルドシートの金具や湯たんぽなどは熱さを確認しましょう。テーブルクロスやコードを引っ張り、熱い物が落下するのも危険です。子どもの目線で点検しましょう。
3歳ぐらいになるとやけどしない程度の熱さのものを短時間触らせて「さわったらアチチ!」と教えるのも一つの方法です。

07. 交通事故

自動車のチャイルドシートはきちんと固定して使用しましょう。1歳ぐらいで嫌がる時期もありますが、頑張って座らせていると『自分の席』という認識になっていきます。
2歳ぐらいまでは、車が危ないと言っても理解できません。手をつないで歩くようにしましょう。子どもは興味のあるものしか見ないので、たとえばボールだけを追って道路に飛び出します。車の直前直後の横断も注意が必要です。小学校低学年でもまだ視野が狭く、自転車は走る場所を選んだ方が安全です。自転車やローラー系の玩具は周囲の道路事情を考えて与えましょう。

08. 機械と危険

エレベーターは、ドアに触れないよう注意し、奥か壁沿いに居ましょう。高層マンションに住む場合、理解できれば1階と住居階の数字やボタンを教えておきましょう。エスカレーターは乗り降りの時に手をつなぎ、足の位置や運びを確かめましょう。ガレージの電動シャッターはゆっくり開閉しますが、はさまれると大変な力がかかります。子どもが巻き込まれないように注意しましょう。
シュレッダー事故など職場の機械は大人が使うことが前提です。日頃子どものいない場所に子どもが入ってきたら、常に行動に注意しましょう。

09. 公園の遊具

遊具の危険には2種類あります。ブランコで例えると、支柱が壊れるなどの『危険』と、揺れを試す『冒険』です。
2歳までは、ブランコの揺れやすべり台の高さなどの危険性は予測できません。動きにくい服装やひっかかるヒモ、足に合わない靴なども危険です。『危険』は大人の責任で防止しましょう。
2~3歳ぐらいから、遊具で遊びます。ブランコでは、最初ゆれる感覚を楽しみ、だんだんこいでスピード感や高さを試す『冒険』になります。チャレンジする時、子どもは真剣で目は輝いて集中力があり、大きなケガにならないことが多いです。もしケガをしても、挑戦した勇気を認めると子どもは元気になります。失敗の理由や次の行動を考えることが成長につながります。

10. 帰省先など

小さな子どもがいないと、手の届く所に大人用のはさみや鉛筆や薬などがあったり、窓のそばやベランダに子どもがよじ登れる物があったり、お風呂の残し湯などがあります。まず点検して危険を取り除きましょう。

福井聖子先生

医学博士。日本小児科学会専門医。大阪小児科医会理事。コモンセンスペアレンティングトレーナー。3児の子育て経験から親目線での保護者への啓発や小児救急電話相談に関わる。

福井聖子

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