おなかの中にいる間に、へその緒を通じて、お母さんの持っている抗体が赤ちゃんに移行して、生後6か月までは感染症から比較的守られています。ただし決してすべての感染症の免疫があるわけではありません。RSウイルスや百日咳など生後6か月以内にかかると重症化するものもあり、最近では妊娠後半の母体にそれらのワクチンを接種することで新生児を守ることができるようになりました。乳幼児はさまざまな病原体の感染を繰り返すことで少しずつ免疫ができ、風邪に負けない体づくり(免疫の貯金)をしているとも言えます。
発熱の原因はさまざまですが、最も多いのは感染症です。体内にウイルスや細菌が侵入して感染すると、病原体の成分が免疫系を刺激して、免疫を担当する白血球を活性化したり、抗体を作ったりします。のどの痛み、咳、鼻水もでますが、これらも局所的な防御反応です。これらの反応を「炎症」と呼び、炎症反応の症状として「発熱」が起きます。体温が上がることで免疫細胞が活性化されることと、体温の上昇により病原体の増殖が抑えられ、感染症の勢いを沈静化させる効果もあります。
迅速検査で診断できるウイルス感染症として、インフルエンザ、新型コロナ、アデノ、RS、ヒトメタニューモなどがあります。インフルエンザには抗ウイルス薬がありますが、それ以外の風邪ウイルスには今のところ乳幼児に処方できる抗ウイルス薬はありません。症状と体調の変化に注意して適切なホームケアを心がけながら、お子さんの免疫で乗り切ることが最も大切なことなのです。
風邪薬といわれている、総合感冒薬、咳止め、鼻水止め、解熱剤は症状を抑え風邪を治すように思えますが、症状の経過を短くすることはできません。病原体にあった抗ウイルス薬、抗菌剤が投与された場合にのみ、経過を短くすることができます。
慢性疾患のあるお子さんで状況に応じて必要なお薬がある方以外は、ご家庭に常備しておくのは、解熱鎮痛剤のみでよろしいでしょう。基本的に小児にはアセトアミノフェンが処方されます。また薬局で求めることも可能です。解熱剤と一般的に言われますが、正式には解熱鎮痛剤で、熱を下げる効果だけでなく、頭痛、耳の痛みなどの痛みにも効果があり、発熱がなくても使用は可能です。
発熱の際には、太い血管のある場所(首すじ、わきの下など)を直接冷やすことも効果的です。額にはる冷却シートは、貼った部位の皮膚の温度を下げて気分を良くしますが、体温を下げる効果はありませんので、ご注意ください。感染症の重症化防止のためには、適切な体温管理と脱水の予防を心がけることが重要です。高熱のまま保温しすぎないこと、経口補水液などを利用したこまめな水分摂取で感染症を乗り切りましょう。経口補水液が苦手で、麦茶やお水を好むお子さんには、ブドウ糖のお菓子(ラムネ菓子)と塩せんべいを与えるという裏技もありです。
感染症の経過のイメージをお示しします。(図1)病原体の勢いが強くなると、発熱をはじめ症状が出始めます。高温でかつ体調がすぐれず、水分摂取もままならない時には解熱鎮痛剤を使ってもかまいません。体調が良いようなら着せすぎに注意し、体を効果的に冷やすことで、解熱鎮痛剤を使用しなくても熱が下がることもあります。体温は朝は下がっていても午後~夜間に発熱することを繰り返すことが多いので、24時間解熱していたら解熱傾向と考えましょう。通常の風邪は2~3日発熱が続くことが多く、1日で解熱したらラッキーと思ってください。「経過表:アプリでもOK」はいざ救急外来を受診するようなときに、的確に医療サイドに経過を伝える資料になります。しっかり解熱するまで記録しておくことをお勧めします。
早朝に熱が下がっていたので、登園させたら午後に発熱して呼び出されたというのはよくある話です。また熱が下がったといっても、感染力がなくなったわけではありません、咳などの症状も軽くなり、本人の食欲や活気が戻ってから登園することをお勧めします。
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