ビタミンDは、食事からの摂取により20%が体内に直接取り込まれ、紫外線によって80%が皮膚で合成されることで体内に取り込まれます。さらに取り込まれたビタミンDは腎臓や肝臓において代謝されることによって活性型ビタミンDに変換され、ホルモンとして様々な効果を持ちます。
そのビタミンDは古くは骨を作るホルモンとして発見されましたが、ビタミンDの不足と高血圧・糖尿病・認知症など多くの病気と関連していることが報告されているため、非常に注目を集めている栄養素です。特に、最近では、新型コロナウイルス感染症で重症化・死亡した人たちはビタミンD不足であったという報告が多く出されたため、ビタミンDがヒトを守る重要なホルモンだということも理解できます。
『色白が美人』という認識が強い日本人女性は紫外線を避ける傾向があるため多くの女性がビタミンD不足であることが知られています。私たちの調査では、平均年齢35歳の女性:2029名を対象としたところ、93・5%の方が、ビタミンDが不足していました。さらに、『モデル体型』が美化されている日本においては、BMIが18以下の女性をシンデレラ体重女子と呼び、その女性たちの98%がビタミンD不足であることも報告されました。つまり、『細くて色白』という多くの若い女性が目指す女性像ではビタミンDが確実に不足することが推測されますので、注意が必要です。
また、若い女性のビタミンD不足は不妊症との関連性が報告されており、たとえ妊娠したとしても流産を繰り返し(不育症)、早産や妊娠中に血圧が高くなること(妊娠高血圧腎症)で、自分だけでなく赤ちゃんも危険にさらすことがわかっています。ただし、ビタミンD不足は日本だけの問題でもありません。なぜなら、オゾン層破壊とともに、紫外線量が増えたことで皮膚がんのリスクが高まり、ビタミンD合成に必要な日光照射を避ける傾向にあるためビタミンD不足は地球規模の問題となっています。特に、年間を通して日照時間の短い北欧のデンマークでは、政府により1962年から1985年5月まで、マーガリン製造メーカーに対して、全ての製品にビタミンD(マーガリン100gに対してビタミンD 50IU)を添加することを法律で義務化しました。そして、この政策を背景に研究を行ったところ興味深い報告がありました。不妊症と診断された人の中でビタミンDを法的強化していた時代は法的強化が終わった時代以降に比べて、出生率が高かったのです。このことはビタミンDを充足させることは妊娠力をアップさせる可能性があることを示しています。そのため、ビタミンDサプリメントを摂取することでも妊孕性を向上させ、排卵障害などの不妊症を改善させることが報告されています。さらに、体外受精などの高度な不妊治療においてもビタミンDサプリメントの摂取が、成績を向上させることがわかっています。
また、コクランレビューでは妊娠中のビタミンDサプリメントが妊娠高血圧腎症、妊娠糖尿病、低出生体重児の発症リスクを半減させることを報告しているため、妊娠を希望する女性はビタミンDサプリメントを妊娠前から妊娠中も継続的に摂取することが勧められます。
ビタミンDは免疫に関与するためアレルギー性疾患との関与も分かっています。そのため、赤ちゃんの時期からの積極的なビタミンD摂取が喘息やアレルギー性皮膚炎の発症を防ぐことが知られています。実際に、ビタミンDが足りないお母さんから生まれた赤ちゃんでは喘息の発症が多かったという報告があります。
さらにビタミンDが神経細胞の炎症を抑制することから自閉スペクトラム症の発症も予防することが報告されています。実際に、自閉スペクトラム症の子どもを産んだお母さんが、次回妊娠中からビタミンDサプリメントを摂取し、生まれた赤ちゃんにも3歳までビタミンDサプリメントを摂取したところ、自閉スペクトラム症を顕著に予防できたという報告があります。また興味深いことに北欧や米国では冬から春にかけて紫外線量が低下した季節(ビタミンD合成が少ない時期)に妊娠期間を過ごした女性の赤ちゃんに自閉スペクトラム症の発症頻度が高く、カリフォルニアやイスラエルのように年間を通じて紫外線量が多い地域(ビタミンD合成が多い時期)で、妊娠期間を過ごした女性の出生児には自閉スペクトラム症の発症が低いことが報告されています。つまり、お母さんは妊娠前から妊娠中もビタミンDサプリメントを摂取したうえで、赤ちゃんにもビタミンDサプリメントを摂取させてあげることが、ビタミンDの免疫力向上により、アレルギー性疾患や自閉スペクトラム症の発症の予防につながる可能性があります。
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