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骨が伸びる、体が育つ

栄養素 子どもの病気 教えて!ドクター

(2022年 秋号 掲載)

骨が伸びるしくみ

赤ちゃんはどんどん大きくなりますが、身長が伸びるためには骨が伸びているはずですよね。まさにその通りです。では、骨はどのように伸びているのか、少しだけ勉強してみましょう。

骨は固くて、関節は動くけれども、骨自体は動かないと思われがちですが、実際は常に変化しています。特に、古い骨を新しい骨に置換するという「リモデリング」と言われる現象が絶えず行われています。また、骨自身が大きく成長していく「モデリング」と言われる現象も絶えず行われています。つまり、静かだけれどもたえず脈々と、骨のリニューアルと成長が続いているのです。骨が少しだけ愛おしく感じますよね。

この骨のリニューアルは、破骨細胞と言われる細胞による骨吸収と、骨芽細胞による骨形成の機能的な連携によって行われています。「破骨細胞での骨吸収」と聞くと「骨が壊されている、骨が溶けている」と感じるかもしれませんが、骨の成長にはとても重要な働きです。

骨の成長に必要なものは

成長していく骨の表面は骨芽細胞で覆われています。骨芽細胞はコラーゲン線維層(=類層)を形成します。この類層にリン酸カルシウムの結晶が沈着することで、折れない丈夫な骨が出来上がります。カルシウムだけでは骨の成長には不十分であり、カルシウム・リン、加えてコラーゲン線維層の元になるアミノ酸(たんぱく質)の摂取も必要であることが分かります。

さらに、骨の成長や維持においては重要なホルモンが3つあります。ビタミンD、副甲状腺ホルモン(PTH)、カルシトニンです。この中で、口から摂取できるものは、ビタミンDだけです。ビタミンDの重要な作用は、血中のカルシウムを増やすことです。すなわち、消化管からのカルシウムの吸収を促進し、腎臓からカルシウムが排泄されてしまうことを抑制する、という二つの作用により、骨吸収を促進します。また、ビタミンDの作用によって血液中のカルシウム濃度が上昇するとカルシトニンが分泌され、骨形成が促進されます。つまり、ビタミンDは骨吸収作用を持っているけれど、骨形成も促進することができるのです。

PTHも血中カルシウムを上昇させるホルモンですが、ビタミンDのように腸管からの吸収促進や腎臓からの排出抑制ではなく、骨吸収によって血中カルシウム濃度を上昇させますので、カルシウム上昇に対する体内での作用の仕方がビタミンDとは大きく異なります。

少しややこしくなってしまいましたね。目に見えないところではありますが、私たちの体の中ではものすごく劇的なことが絶えず行われていると思うと、感動しませんか?

赤ちゃんのビタミンD摂取目安

それでは、赤ちゃんのビタミンDはどのように、どれくらい摂ることが望ましいのでしょうか?

「日本人の食事摂取基準」(2020年版)によると、ビタミンDの摂取目安について、
0~11か月児では5μg/日、
1~17歳までは3~9.5μg/日(日照などによる条件の差が大きい)、
妊婦・授乳婦を含む18歳以上は8.5μg/日、
とされています。

日本人の母乳中のビタミンD濃度は3.0μg/Lと報告されています。赤ちゃんの1日あたりの授乳量は1Lに満たないため、この基準の中では「母乳に由来するビタミンD摂取量を2.38μg/日と見積もる」とされています。すなわち、摂取目安には母乳だけでは満たせない、ということになります。不足すると、骨の成長に影響が出てくる可能性があるとされています。

でもご安心を。日光浴でビタミンDは皮膚で産生できます。600cm²(成人の顔面及び両手の甲の面積に相当)の皮膚であれば、7月の日中なら数分~13分の日光浴で5.5μgのビタミンDが産生できます。ただし12月になると日照が減り、特に関東以北では2時間以上の日光浴が必要となり現実的ではありませんし、紫外線による影響も心配される方もおられるでしょう。欧米では、不足するビタミンDはサプリメントで摂取するという考えが一般的です。日本の赤ちゃんたちにも、十分なビタミンDを摂取して、骨と体の健やかな成長を促してあげたいですね。

 

寺澤大祐先生

岐阜県総合医療センター新生児内科 医長。日本周産期新生児医学会 周産期(新生児)専門医・指導医。生命と健康の維持が危険な状態にある赤ちゃんの救急救命と集中治療が専門。また障がいと共に生きる子どもと家族のための医療も大切にしている。最新刊は、「小児在宅人工呼吸療法マニュアル第2版」(メディカ出版)。

寺澤大祐

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