感染症 子どもの病気 教えて!ドクター
お子さまの体調の変化がいつも以上に気になる季節。
日頃の生活で気をつけることや、不調のサイン、ホームケアのコツを小児科皮膚科医の佐藤德枝先生に教えていただきました。
今年も新型コロナウイルス感染症対策や生活の変化で、ママ・パパは大変だったことと思います。昨年はインフルエンザがほとんど流行しなかった一方で、今夏はRSウイルスが全国で流行しました。この背景には昨年は保育所の登園自粛などで、集団生活での感染症が激減したためと思われます。
ウイルスには膜(エンベロープ)に包まれていてアルコール消毒が有効なエンベロープウイルスと、膜に包まれておらずアルコール消毒が効かないノンエンベロープウイルスの2種類があります。
新型コロナウイルスやインフルエンザはエンベロープウイルスなので、アルコール消毒、マスク、手洗いなどの新型コロナウイルス対策によってインフルエンザの流行が抑えられたと考えられます。
一方、アデノウイルス、ライノウイルスなどはノンエンベロープウイルスなので、アルコール消毒が習慣になった今年でも発生がありました。9月になりコクサッキーウイルス(夏風邪のヘルパンギーナ、手足口病などの原因)も出ていました。
特効薬がない感染症だからこそ、感染防止対策を続けていくことが必要です。むやみに不安がることなく、正しい知識を持ち、適切に対応していきましょう。
感染予防のために心がけたいのは、規則正しい生活、バランスの良い食事、適切な時期の予防接種です。新型コロナウイルスのワクチンは小さなお子さまは接種できないので、ママ・パパが可能な限り接種するようにしましょう。
また、部屋の温度・湿度を快適に保ちつつ、定期的な換気も忘れずに。そして重要なのは、こまめな手洗いや手指の消毒です。石けんで洗って流水でしっかりウイルスを洗い流す…基本的なことですが、継続していきましょう。
新型コロナウイルスの感染対策をしていれば、ある程度の病気は防ぐことはできますが、完全ではありません。お子さまは10歳頃まではさまざまな病気にかかり、抗体を作ることで成長と共に丈夫になっていきます。「風邪をひかせてしまった…」と自分を責めるママ・パパもいますが、いろいろな人と接しながら社会生活を送るうえで、病気にかかりながら免疫力を高めることはお子さまにとって必要不可欠なことなのです。重要なのは不調に早めに気づき、重症化させないことです。気になることがあれば、早めにかかりつけ医に相談しましょう。
「エンベロープ」と言われる主にタンパク質から構成される膜に包まれていて、この膜をアルコールで壊すことで感染力を無力化します。新型コロナウイルスもこの仲間です。
●新型コロナウイルス
●インフルエンザ
●RSウイルス
●ヒトメタウイルスニュウモ
●パラインフルエンザウイルス など
「エンベロープ」がなくても感染力を維持できるウイルスで、アルコール消毒は効きません。下記の感染症の汚物処理には、次亜塩素酸ナトリウムか塩素系漂白剤で消毒しましょう。
●ノロウイルス
●ロタウイルス
●アデノウイルス
●ライノウイルス
●コクサッキーウイルス など
●溶連菌
●マイコプラズマ肺炎 など
肺炎球菌、インフルエンザ菌などの肺炎、溶連菌感染症、マイコプラズマ感染症などの治療には、抗菌剤が有効です。風邪に抗菌剤は効果がありません。 「抗菌薬を正しく使い、未来の子どもたちに有効な抗菌薬を残すことが大切」と、今、世界中で抗菌薬の適正な使用をするように勧告されています。
不調のサインを感じたら、なるべく静かに過ごし、それでも症状が続く場合は受診しましょう。
熱が高い時は、首の後ろ、わきの下、鼠径部(そけいぶ・脚の付け根)を冷やし、厚着をさせず、室温も高くならないように注意しましょう。夜に発熱しても食欲があり眠れているなら、翌朝の受診でもいいでしょう。熱がなくても目つきがおかしい、呼吸が変だなと感じたら、早めに受診してください。
熱が3 8.5℃以上あって辛そうであれば、解熱剤を使っても構いません。きょうだい・いとこに熱性けいれんを起こす人がいるなら、急激に熱が上がって熱性けいれんを引き起こすのを防ぐため、早めに解熱剤を使用してもいいでしょう。
熱性けいれんは怖いものではなく、大抵は一過性のもので、それが原因で後遺症が残ることはありません。ですが、けいれんが5分以上続いたり、何度も繰り返す場合はすぐに受診が必要です。
部屋の湿度を上げる、水分を摂り、口の中を潤すほか、寝る時は布団などを背中の後ろに置いて少し上体を起すとラクになることも。咳がひどければ病院を受診するといいでしょう。声が出ない、呼吸が苦しい場合は早めに受診してください。
一般的に風邪の初期には透明で水っぽい鼻水がたらたら流れ出ます。鼻水は鼻すい器を使うなどして、こまめに拭き取りましょう。症状がひどくなると、鼻の奥にある副鼻腔に膿性の鼻汁がたまる副鼻腔炎になり、咳がひどくなることもあります。咳や鼻づまりなどの症状が改善しない、鼻水が臭う場合は早めに受診しましょう。
下痢や嘔吐を繰り返している時は脱水症状に気をつけ、経口補水液で水分補給を心がけましょう。食事は刺激物やよほど消化の悪いものでなければ、食べても大丈夫です。牛乳や果物のジュースは控えましょう。汚物処理する際は、ノロウイルスの可能性をふまえてアルコール消毒ではなく、次亜塩素酸ナトリウム(ミルトンなど)や塩素系漂白剤(ブリーチなど)を使いましょう。
市販品がない場合は…
湯冷まし1Lに
・食塩小さじ0.5(3g)
・砂糖大さじ4.5(40g)
をよく混ぜて溶かしましょう。
まれですが、繰り返し泣いたり吐いたりして、イチゴジャムのようなドロッとした血便が出た場合は、腸重積の可能性もあり、早めの処置が必要です。
♯8000(下記参照)などに相談して、夜間や休日であれば救急病院へ。
お子さまの成長のことや子育ての仕方など気になることがあれば、予防接種や乳幼児健診の際にかかりつけ医に相談してみましょう。「風邪をひかせないよう万全にケアしなきゃ」と、子育てに関して「100%を目指そう」と先回りしてすべて完璧にやろうとする必要はありません。
「60%くらいで大丈夫!」と気負わないこ
とも大切ですよ。
Copyright © 2011 Mikihouse child & family research and marketing institute inc. All rights reserved.
この記事にコメントしよう