腰痛・腱鞘炎 ママの病気・健康 教えて!ドクター
子育て中に腰痛を訴え来院する母親は多く、子どもの年齢は乳幼児から2~3歳までと広い範囲に及びます。妊娠中期・後期から多少とも腰痛を自覚していることが多く、産後の体調や育児の負担で症状がより強くなることがあります。
妊娠・出産においては、母体にとって非日常的な状態が長く続くことになります。特に妊娠後期では、胎児を常に体の前で抱えている状態が続き、背中は常に反りがちとなり、腰を支える重要な腹筋と背筋にとっては大きな負担になります。腹筋は緩み、背筋は過緊張となりがちで、結果として筋肉由来の腰痛となります。
また、妊娠によるホルモンバランスの変化による筋の緩みや骨盤内胎児の影響による血行動態の変化から生じる冷えや浮腫みも腰痛を助長する要素になります。
分娩後では、これら妊娠中の状態を抱えながら、育児をしなければなりません。毎日の授乳やおむつ替え、赤ちゃんを抱っこするといった動作を頻繁に行う必要が生じます。よって、必然的に腰を屈め中腰姿勢での動きが多くなり、これらをある期間続けることは確実に腰への負担となります。
また、もう一つ重要な要因に育児に関わる精神的ストレスが挙げられます。一般的な腰痛の原因としても、精神的ストレスは近年注目されています。
腰痛が何らかの動作と関係なく、安静時にも生じる場合には、婦人科領域疾患(子宮筋腫や子宮内膜症など)の可能性があり、かかりつけ医師に相談する必要があります。
腰痛に伴い、下肢のシビレや痛みを訴えることもあります。この場合には、筋肉由来の腰痛だけではなく、腰椎椎間板ヘルニアの可能性についても考えなくてはなりません。また、腰痛を庇う動作により、背中や頸部まで広範囲に張りや痛みを訴えることもあります。前述した安静時の腰痛が強い場合や腹痛・排尿時痛など他の症状が付随して生じる場合には、他科領域の疾患である可能性もあり、かかりつけ医に相談する必要があります。
通常、筋肉由来の腰痛では消炎鎮痛剤の投与や腰サポートベルトの使用および理学療法での体幹筋強化が行われます。しかし、妊娠中は投薬や積極的な理学療法は適応にならず、またレントゲン検査もできないことから、十分な診断・治療を行うことはできません。できるだけ楽な姿勢を保つような生活指導が中心となります。
分娩後も、母乳にて育児を行う場合には鎮痛剤などの投与は適応になりません。湿布に関しては、飲み薬とは違い薬剤成分が血液中に少量しか移行しないため母乳への影響は少ないとされます。しかし、中には、医師や薬剤師に相談が必要なものもあり、基本的な用法・用量も含め使用前には注意が必要です。サポートベルトや理学療法に関しては適応になりますが、一日の多くの時間を育児に費やされる状況では、理学療法に通うことが困難な場合が多いです。よって、普段から腰の負担となるような中腰姿勢はできるだけ避け、子どもを抱き上げる場合には常にしゃがんだ姿勢から体の近くで抱き上げるようにします。
また、母親の精神的なストレスを緩和することも治療として重要です。この点、核家族化が進んだ現在では父親の育児への参加は非常に重要となります。最近では、育児休暇制度の利用も一般化しつつあり、育児を分担することで母親の肉体的・精神的ストレスはかなり軽減されます。
予防は、妊娠早期から行うことが必要です。自宅でできるストレッチや腰痛体操はネット情報で簡単に得られますので、毎日少しずつ継続して行ってください。また、マタニティヨガ、マタニティスイミング、マタニティビクスなど妊婦さん向けの運動に参加してみるのも、ストレス発散、体力維持、筋組織の血行回復の面から効果が期待できます。
妊娠後期からは、積極的な運動はできなくなりますので、日常生活での中腰姿勢や腰痛を誘発するような動作を極力避けるようにし、普段から体を冷やさない工夫や効果的な入浴法などをあらかじめ調べておくことも重要です。
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