感染症 子どもの病気 教えて!ドクター
昔から日本人は「病気がうつる」という言葉を使っていました。ワクチンや抗生物質のなかった時代は、病気の多くが感染症だったからでしょう。
感染症の発生には3つの要因が必要です。それは微生物側の要因(ウイルス・細菌など)、宿主側の要因(年齢・免疫など)、さらに環境要因(温度・湿度など)となります。この3つの要因が重なってはじめて感染症が発症します。
また、ウイルスのような病原体が体内に侵入しても必ず病気になるわけではありません。それは、体には防御の仕組みが何重にも備わっているからです。例えば、口の粘膜には病原体をやっつけるための唾液が出ていますが、これが最初のバリアーです。そのバリアーを乗り越えても血液中には白血球などが待ち受けており、病原体を食べたりします。これらの第一段階の防御を「自然免疫」といいます。
これを突破されたら第二段階の高度なシステムである「獲得免疫」が出動し、過去に侵入してきた病原体を覚え、その病原体が再び入ってきたら素早く排除します。ワクチンなどがそうです。
医療がまだまだ進んでいない昔から、唾液は薬になるとの言い伝えがありました。「唾(つばき)万病の薬」ということわざが日本でもありますが、全国各地に唾液の力についての俗言や伝承はあります。私も小さい頃に、「親の唾は薬」と祖母から教えてもらい、子どもが怪我した時は、親が唾液をその傷口に塗ると治りが早いと説明をうけたことがあります。
さて、その唾液ですが、現代医学においても、抗菌作用や抗ウイルス作用が認められています。唾液中に含まれるリゾチームやラクトフェリンなどは強い抗菌作用・抗ウイルス作用をもちますし、近年では、Secretory LeukocyteProtease Inhibitor(SLPI)の抗HIV作用も示されています。唾液は99・5%が水分なのですが、他の0.5%は全身の健康に欠かせない魔法の水なのです。
ウイルスはまずは口から入ってきます。最初の防御はなんといっても唾液の力。唾液の力はウイルスに個体が打ち勝つためにも、本当に大切なのです。
唾液は唾液腺という穴から口の周りの筋肉の力で出てきます。口の周りの筋肉が衰えたら唾液も出にくくなるのです。栄養をしっかりとって、抗菌作用たっぷりの良質の唾液を出すのも大切です。よく噛みながらバランスよく食事をとれるようにしましょう。
インフルエンザや肺炎は、病原体が咽頭表面に定着することにより開始します。口腔細菌からノイラミニダーゼやプロテアーゼを放出し、口腔粘膜表面を変性させ、病原体の定着を促進することも分かっており、その結果、呼吸器疾患に感染する可能性が増加します。口腔環境が悪化して、口腔細菌叢のバランスがくずれることによって、より病原体の定着を促進させることが推測されますので、日頃の口腔ケアは重要です。
また、口腔内の衛生状態が悪化することにより、口腔細菌数が増加するとウイルスの感染力が増し、ウイルス性肺炎や人工呼吸器関連肺炎(VAP)を増悪させることは報告されています。特に高齢者や基礎疾患がある方の場合、日頃から口腔細菌数をコントロールする必要があり、緊急時に人工呼吸器が装着される事態になった場合、人工呼吸器関連肺炎(VAP)を引き起こすリスクが高まることも報告されています。人工呼吸器をつける可能性があるこのご時世ですので、是非、日頃より口腔衛生状態を管理してください。
病原体は口から入ってくることが多いため、唾液力も含めて口から免疫はスタートします。口の中の環境を綺麗にしていくことも、手洗い・マスクなどと同様に大切だと考えています。
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