子どもの病気 教えて!ドクター
生物はカルシウムの豊富な海で発生し、その後淡水に移動したり陸に上がる時に、カルシウムを体に取り込むためにビタミンDが発生しました。ビタミンDは意識して取らないと不足する栄養源でありカルシウム調節ホルモンです。そしてその多くは皮膚で紫外線によって産生されることがわかっています。また食物では魚介類、レバー、卵、キノコ類に多く含まれています。
母乳は赤ちゃんにとって最も好ましい栄養であることは言うまでもありません。母子の愛着形成、免疫システムの活性化、将来の肥満や糖尿病の予防等のメリットが多くあります。でも実はデメリットもあります。母乳栄養ではビタミンDと鉄が不足することがわかっています。鉄の不足によっておこる鉄欠乏性貧血は主に生後6ヵ月以降に問題になるのですが、ビタミンD不足は生後すぐから問題になります。
ビタミンDの多くは日光(紫外線)によってつくられますが、紫外線暴露による将来的な皮膚がん発症リスクを考慮し、1998年に、母子手帳から「日光浴」を勧める記載が削除され、「外気浴」に変更になりました。居住地域と季節によって戸外での紫外線暴露の時間が大きく変化しますが、この20年間、若い女性が日光を避けるようになったために、お母さんはもちろん、お腹の中にいる赤ちゃんはお母さん以上にビタミンD不足になっていることがわかってきたのです。人工乳にはビタミンD が充分添加されているので、人工乳で育てたお子さんはビタミンD 不足は解消しますが、母乳で育てられた赤ちゃんはビタミンD不足が続くことになります。
私どもが調査した関東から中部地方の母乳栄養中心の赤ちゃんのうち約75%の赤ちゃんがビタミンD不足であることがわかりました。また東北地方では約90%が不足していることが報告されています。
母乳栄養児のビタミンD不足は海外ではすでに常識です。先進国では栄養を母乳中心で与えている間はビタミンDを補充しています。
紫外線不足と母乳栄養以外に、ビタミンD不足になるリスク因子には、アレルギー性疾患治療のための過度な食事制限、離乳開始の遅れや離乳遅延、自然食・菜食主義などが挙げられるので、より注意が必要です。
国際コンセンサス勧告では、くる病の予防目的でのビタミンDの補充として、400単位(10μg)/日のビタミンD補充を、哺乳方法にかかわらず生直後から12ヵ月までのすべての乳児に勧めています。
日本では2014年にビタミンD液体サプリメント(森下仁丹社製)ベビーディ B a b y D 1滴80単位(2μg)国内一般販売され、その後、医療機関を通じてベビーディ B a byD 2 0 0 1滴200単位(5μg)も販売されるようになり、乳幼児へのビタミンD欠乏の予防が可能になりました。
厚労省の食事摂取基準では、乳幼児で1日5μg、成人で1日5.5μg とされていますが、毎日の充分な日光浴を前提とした最低基準と考えてください。これから冬を迎えるにあたり、母乳栄養中心でお育てになるお子さまには、1日400単位(10μg)のビタミンDを補充していただくことをお勧めします。
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