感染症 子どもの病気 教えて!ドクター
入園や転園してまもなくすると、それまであまり熱を出したことがなかった子が、何度も発熱したり、咳や鼻水が出るようになったりします。お家にしかいなかった子は、他の子や大人と一緒にいることで感染する機会が増えますし、新しい園に替わった子は、今までかかったことのないウイルスや細菌による風邪をもらってしまうかもしれません。
有名な小児科の教科書のネルソンには、子どもは平均して年6〜8回風邪をひき、9〜15%の子どもは少なくとも12回風邪をひくと記されています。風邪の原因は80〜90%がウイルスで、残りは細菌など。全体の30〜50%はライノウイルスが原因ですが、その血清型は100種類以上あり、他に原因となるウイルスだけでも少なくとも数十種類あるので、風邪の原因はほぼ特定できません。
風邪のウイルスをやっつける薬はないので、医療機関に行ってもらうのは、症状を和らげる対症療法の薬です。痰を切りやすくする薬や解熱鎮痛薬といった感じですね。水分をたくさんとって、家でゆっくり休むのも立派な治療です。薬を飲んだから早く風邪が治るということはありません。
他に、冬に多いロタウイルス性胃腸炎やRSウイルスによる細気管支炎、インフルエンザが春先まで流行っていることもあります。また、従来は夏に多い感染症が、春から初夏にかけて流行ることがあります。りんご病、水ぼうそう、おたふく風邪といったものです。ワクチンで予防できるものはワクチンを受け、園から家に帰ったら手洗い、うがいをしましょう。うがいがまだできない子はワクチンと手を洗うだけで、もちろん大丈夫です。
病院や診療所に行ったほうがいいのは、眠れないくらいつらい症状がある場合か、風邪ではなく他の病気がないか診てほしいときです。例えば、咳がひどくて眠れないとか、お腹が痛くて下痢がひどい、耳を痛がり中耳炎かもしれない、といったようなときに受診をします。よく、保育所や幼稚園が「(ロタウイルスなどの)検査してもらってきてください」と言うことがありますが、どの検査が必要か、いつ検査をするかは医師が決めるものですね。私は、検査する必要のないときには実施せず、園にその旨を電話することがあります。
ホームケア、家でできる看病はどういうことでしょう。病気になったら、横になって休むのが楽ですね。清潔で柔らかい寝具、静かな環境を整えます。暑すぎず寒すぎない室温にしましょう。数値に決まりはありませんが、冬なら20〜22度で湿度40〜50%、夏は25〜27度で50〜60%を目安にしましょう。着せる物や掛け物で、適宜調節してください。食事は摂れるものならなんでもいいです。具合や機嫌が悪く、好きなものしか食べない、飲まない場合には、それだけになっても仕方ありません。咳や鼻水、熱が出る上気道感染(いわゆる風邪)の際に、お粥をあげなくてはいけないということはありませんが、のどが痛そうだったら口当たりの良いやわらかいものを与えましょう。食欲が無いときに無理に食べさせることは難しいばかりでなく、消化できずに吐いたり下痢したりしてしまうかもしれません。水分だけは十分に飲ませましょう。
ウイルス性胃腸炎、つまりお腹の風邪だったらどうでしょうか。私が研修医だった20年以上前だったら、吐いたり下痢をしたりしている子は、「お腹を休めましょう」と言って絶食にし、点滴を行いました。今は違います。激しく吐いている最中でも、経口補水液を少量ずつ与えます。子ども用でなく普通の経口補水液、OSー1やアクアライトで構わないので、ペットボトルのキャップ1杯分くらいを5〜10分おきに飲ませます。乳児だったら、母乳やミルクです。もしも本人が食べたそうにしたり、「食べたい」と言ったりした場合には、あげてみましょう。固形物のほうが液体よりも吐かないということもあります。
2000年にJournal of Pediatric Gastroenerology and Nutrition 30 (5) に載った急性胃腸炎の治療の柱には、以下のように書いてあります。
① 脱水の水分補正には経口補液剤(Oral Rehydration Solution)を用いる
② 使用ORSは低張液とする(ナトリウム60mEq/l、ブドウ糖74-111mmol/l)
③ ORSによる脱水補正は急速(3〜4時間)に行う
④ 食事の再開は早く行い、固形食を含む正常食とする
⑤ 治療乳※は不要
※乳糖不耐症ミルクや大豆ミルクなど
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