私が小中学生の頃、夏はよく下痢をしました。小児科医になって、夏風邪は、もともと胃腸のウイルスだとわかり下痢の理由がわかりました。免疫のおかげで、今ではほとんど下痢はしません。
夏風邪では鼻水はでません。冬の風邪とはそこが違います。夏風邪は、3つあります。
1.ヘルパンギーナ
2.手足口病
3.咽頭結膜熱です。
1.と2.は双子のような関係です。原因ウイルスが似ていて、全く同じこともあります。たとえば兄弟で同時に感染した場合、一人は手足口病となり、もう一人はヘルパンギーナとなることもあります。
3.はプール熱とも言われます。
夏風邪ウイルスの主な感染経路は接触によるものです。乳幼児では、下痢便を処理する大人の手を介して感染します。発熱や下痢が続いている場合は特に感染しやすいです。予防は手洗いの励行と排泄物の適正な処理が基本となります。
集団生活では人と人との距離が非常に近いです。図をご覧ください。4人家族が家にいる状態が図aです。もし家を学校・保育園とみなして人口密度がどれくらいかを示したものが図bです。集団生活では、大人に比べ免疫を持たない子ども同士が接触する機会は多くなり、感染のチャンスは増えます。
ヘルパンギーナは突然発熱します。脳の発達が未熟な乳幼児では熱性けいれんをおこすこともあります。喉が痛むとされていますが、私が診療していると喉が痛くないことも多いです。喉をみると、粘膜疹という小さな発疹がみられます。高熱ですが、比較的元気はあり、数日で熱は引きます。
手足口病は文字通り、手の平と足の底に小さな発疹ができます。口の中には、舌やほっぺたの内側に粘膜疹がでます。手や足の発疹は無症状です。お尻に発疹ができる場合もあります。口の中の粘膜疹はできる場所によって痛みが違います。一番痛いのが舌の端です。食べるときに一番最初に物が当たるので痛いです。ミカンや、トマトはとても痛がります。牛乳がもっとも痛みが少ないようです。食事は無理をせず、プリンやヨーグルト、アイスクリームなどのど越しの良いものを。夏風邪は、手足口病以外でも、体や顔に発疹ができます。突発性発疹によく似ていますが、突発疹と違って、夏風邪では熱と発疹が同時に出ますので、そこが診断の根拠になります。
咽頭結膜熱は夏に多いので風邪に含まれてはいますが、年中みられます。急に熱が出て、5日間ほど続きます。比較的元気であれば、解熱後2日してから集団生活が可能となります。必ずしもプールでうつるわけではないのですが、プールの塩素濃度を基準以上にすると感染しにくくなります。塩素は、プールの細菌やプランクトンの増殖を抑えるためにも必要です。
夏は気温や湿度が高い環境のなかで、身体が適応できず脱水をきたし、ぐったりする熱中症という病気があります。そういう環境にいて、子どもが熱を出すと「熱中症でしょうか?」と言って来院される親御さんもみえます。ほとんどは熱中症ではありません。熱中症で、もし熱が出たら重症です。頭の中の温熱中枢が不具合を起こしていますので、ほぼ意識もありませんし、緊急事態です。
夏風邪の概要を説明しました。どうぞ御参考にしてくださいね。
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