感染症 予防接種 教えて!ドクター
何度も押し寄せた厳しい寒波を乗り越えて、私たちは春の訪れを迎えようとしています。子どもたちが保育所・幼稚園へと集団生活デビューするのももうすぐです。お父さんもお母さんも、その日が来るのを期待半分、不安半分で待っておられることでしょう。ここでは、集団生活デビューの前に保護者の皆さんに覚悟しておいてほしいこと、具体的に準備してほしいことを、医療の面からお伝えしたいと思います。
「先生、この子もう2ヵ月も咳と鼻水が続いています。どこか弱いのではないでしょうか」という相談をよく受けます。お子さんの年齢は決まって1歳から2歳。こんな時私は「生後6ヵ月を過ぎたら3歳になるまで、風邪をひく、熱を出す、下痢をする、それが子どもたちの仕事です」とお話ししています。
お腹の中でお母さんからもらった、感染から身を守るための抗体が姿を消し、自分で身を守らなくてはいけなくなるのが生後6ヵ月、そこからは次々にいろいろな感染症を経験して自前の抗体(免疫・抵抗力)を作らなくてはなりません。どの子にも与えられる、将来への抵抗力を作る「仕事」です。咳、鼻水という症状が続いていても、実は何度か風邪を乗り換えています。途中、熱を出すことがあれば、それが乗り換えのポイントです。
集団生活に入れば「仕事」はさらに加速されます。特に最初の3ヵ月、嵐のように次々と病気をもらってくるでしょう。子どもたち同士が濃厚に接触して10時間前後一緒にいるわけですから、うつるなという方が無理な状況なのです。慌てることなく、適切に症状に対処してください。
母子手帳を取り出して、必要な予防接種がすべて済んでいるかどうかをもう一度確認してください。ワクチンで防げる病気はワクチンで防いであげるのが基本です。ワクチンは体に作用を及ぼす「薬」ですから副反応は必ずあります。しかし、そのほとんどは接種部位が腫れて赤くなったり、短時間発熱したりといった軽いもので、重い副反応はごく稀です。実際にその病気にかかった時に比べるとそのリスクは非常に小さいものになっています。ワクチンの効果とリスク、その頻度まで考えてきちんと接種してあげてください。
定期接種になっているヒブ、肺炎球菌、B型肝炎、ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ、麻疹、風疹、水痘、どれも済んでいますか?
ヒブや肺炎球菌は、基本的にはのどの常在菌(害を起こすことなく普通に存在している菌)ですが、風邪などをきっかけとして血液の中に入り髄膜炎などの重大な感染症を起こします。保育所に入る前は3割程度だったこれらの菌の保有率が、入園後3ヵ月で90%を超えるようになるという報告があります。このワクチンの効果は絶大なので、きちんと接種して髄膜炎を予防してあげましょう。
麻疹(はしか)が命にかかわる病気であることはよく知られていますが、水痘(みずぼうそう)も脳炎などで年間10人程度の方が亡くなっている重大な感染症です。決して甘く見ないでください。また定期接種にはまだなっていませんが、おたふく風邪もムンプス難聴という一生続く後遺症や、髄膜炎などを起こす重大な病気です。この2つの病気のワクチンは1回接種と2回接種で大きく効果が異なり、1回では接種していても5人に1人ぐらいかかりますが、2回接種するとめったにかからなくなります。
集団生活に入ってから次々に風邪をひいてくれる「仕事熱心な子」にも神経質にならず、おおらかな気持ちで見守っていく一方で、ワクチンで予防できる病気は、ワクチンでしっかりと予防して、お子さんの保育所・幼稚園での楽しい生活、更にはお子さんの未来を守ってあげてください。
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