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冬の感染症予防とホームケアのポイント

感染症 子どもの病気 教えて!ドクター

(2017年 冬号 掲載)

きげんがいいか、つらそうか お子さまの様子を見きわめて

空気の乾燥するこの季節はウイルスの活動が活発になり、赤ちゃんや幼いお子さまは発熱、咳、嘔吐、下痢などを起こしやすくなってきます。

冬の感染症としては、最もポピュラーな風邪症候群、突然の高熱を発するインフルエンザ、お腹の風邪と呼ばれるノロウイルスやロタウイルス、呼吸器系のRSウイルスなどがあります。2017年は早くも9月にインフルエンザの感染が確認され、流行が早いようです。またRSウイルスも増えています。最初は普通の咳風邪かと思いがちですが、生後6ヵ月未満でゼロゼロとぜんそくのような音がしたら早めに受診しましょう。

発熱は病気の目安のひとつですが、体温計の数字だけで病気かどうかを判断しないことです。私の診療室にはおもちゃコーナーがあるのですが、受診に来た子がまっすぐそこに行って遊びだすようなら、まず大丈夫。まだおもちゃで遊べる月齢の子でなくても、普段と変わらないごきげんならお熱が高くても心配はいりません。逆に、ぐったりしたり、つらそうだったり、いつもと様子が違うなと感じたら不調のサイン。

特に基礎疾患のないお子さまであれば、まず左の症状別ホームケアで対応して、少しでも楽な状態にしてあげて様子をみて、症状が長引いたり、重くなるようなら受診しましょう。

咳が出る

多少の咳でも元気そうなら、室内を加湿してこまめに水分をあげて様子を見ましょう。苦しそうなときは上体を起こしてあげると呼吸が楽になります。胸からゼロゼロヒューヒューと音がする場合は早めに受診しましょう。

発熱

発熱は病気と戦うための正常な防御反応。なるべく解熱剤などは使わないに越したことはありません。熱が上昇中はまだ汗をかかず、ガタガタ震えて寒がります。いつもより重ね着をしたりお布団にくるむなどして温めてあげましょう。熱が上がりきったら汗をかき始めます。薄着にして、濡らしてしぼったタオルで汗をかいた体を拭いてあげましょう。冷やすときは、大きな動脈が通っている脇の下やそけい部を冷やします。

鼻水・鼻づまり

鼻がつまってミルクが飲みにくそうだったり、寝苦しそうな場合は市販の吸引器や濡らした布などで取ってあげましょう。吸引器をいやがる場合、母乳育児されているママでしたら「母乳点鼻」という手も。赤ちゃんの鼻に新鮮なおっぱいを1滴か2滴垂らすと鼻づまりがやわらかくなり、取りやすくなります。

下痢

汚れたおしりはかぶれたりばい菌が入りやすくなります。薬品成分の入ったウェットティッシュは使わず、ぬるま湯できれいに洗い流してから、やわらかなタオルで水気を吸い取り、ローションなどで保湿してあげましょう。

嘔吐

吐いてすぐに何か飲ませるとまた吐いてしまうので、30分ほどしてから少しずつ経口補水液などの水分を与えます。2〜3回程度の嘔吐で終わり、ふだんどおりの様子ならさほど心配ありません。

受診に迷ったら参考に!

厚生労働省研究班/公益社団法人 日本小児科学会が監修するウェブサイト『こどもの救急』

「気になる症状」の中からお子さまの状態に近いものをクリックして、各症状ページに書かれている具体的な症状をチェックボックスで選び、「結果をみる」ボタンを押してください。お子さまの症状にあわせて、その対処方法が表示されます。

熱性けいれんって?

乳幼児の10人に1人は熱性けいれんを経験すると言われています。熱の出始めもガタガタ震えるので「けいれん?」と思ってしまいますが、悪寒による震えと違って熱性けいれんは突然体をこわばらせて、白目をむいて意識がなくなります。たいていは一過性のものなので数分でおさまります。落ち着いて対処しましょう。

けいれんが起きたら
・衣服をゆるめ、体を横向きに
・口の中には何も入れない
・体を揺すったりしない
・けいれんが何分続いたか把握する

こんなときは受診を
・初めてのけいれん
・けいれんが10分以上続く
・体の一部だけのけいれん
・左右でけいれんに差がある

赤ちゃんの体温を測るコツは?

脇の下のくぼみに体温計の先端を差し込むように当てて、脇を閉じ、きちんと押さえながら測ってください。安定しない場合は後ろから抱きかかえるようにして。手軽に耳で測る体温計も出ていますがあまり正確には測れないこともあるので、脇の下で測ることをおすすめします。

乳幼児は時間帯によって体温がかなり上下しますので、毎日同じ時間帯に体温を測る習慣を付けておくといいでしょう。授乳後や食後、運動した直後は体温が上がるので、少し落ち着いてから測りましょう。

0歳児でもインフルエンザの予防接種は必要?

インフルエンザの予防接種は生後6ヵ月から受けられますが、1歳未満の赤ちゃんはまだ自分で免疫をつくれる状態になっていないため、積極的にはすすめていません。1歳を過ぎてからで充分だと思います。

赤ちゃんよりも、ママやパパ、保育園や幼稚園に通う上のお子さまの予防接種はもうお済みですか? 毎年流行が早まっていますが、本格的なピークを迎える前に抗体ができるように11月〜12月には予防接種を完了させておきたいところです。任意接種のため全額自己負担になりますが、幼いお子さまのいるご家庭ではなるべく接種をされるようにおすすめしています。

ふだんから実践!
病気になりにくい生活習慣

●手洗い・うがい
外出先から帰ったときの基本の予防法。うがいができない赤ちゃんは、お水を飲ませて喉を湿らせるだけでも有効です。手洗いは家庭でも食事の前などに習慣づけましょう。

●早寝・早起き
規則正しい早寝・早起きがお子さまの自律神経を整え、基礎体力をつけます。お子さまの生活リズムに影響を与えないように、ママ・パパも夜ふかしには要注意。

●薄着
乳幼児は大人より1枚少なく、薄着で過ごすのが基本です。女性は寒がりの方が多いせいか先回りして寒さから遠ざけようとしますが、お子さまが寒いと体感する前に厚着させるのはよくありません。寒いと感じたら動いて体温を上げ、自分で体温調節ができる子にすることが大切なのです。薄着だと赤ちゃんも寝返りやハイハイなど自分で運動しやすくなります。気温に合わせて、こまめに脱ぎ着させるようにしましょう。

●温度と湿度
ご家庭の室内環境もこまめに調節を。薄着でもお子さまの背中が汗ばんでいるようなら少し暖房温度を下げて。またウイルスは乾燥した空気を好むので加湿も必須。50〜60%程度の湿度を保ち、喉や鼻の粘膜を守りましょう。

●栄養バランスのよい食事
毎日の食事で、炭水化物、脂質、たんぱく質の3大栄養素に加え、ビタミン、ミネラル(カルシウム、鉄分など)をバランスよくとることを心がけましょう。理想的なのは、ごはん、パン、麺などの「主食」、肉、魚、卵を使った「主菜」、野菜や海藻などの「副菜」に「汁物」を組み合わせた食事。赤ちゃんは母乳やミルクを飲めていれば大丈夫。食事幼児期には好き嫌いもあるかと思いますが、1食だけで見るのではなく、1日、1週間単位で栄養バランスを考えて。

三輪操子先生

三輪小児科医院(東京都中野区)院長。東京女子医大卒業。国立仙台病院小児科入局。渡米ニューヨークに約2年半。帰国後は聖路加国際病院で新しい小児科学を学ぶ機会を得る。1988年に三輪小児科医院院長就任。現在は中野区立小学校校医、私立保育園2か所の園医等をして、地域の役に立つことを望む。

三輪操子

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