感染症 子どもの病気 教えて!ドクター
カゼにしては、咳がしつこく残って、インフルエンザじゃないのに熱も下がらず治らないと思っていたら…、かかりつけ医の先生から「マイコプラズマ肺炎ですね」と言われました。
マイコプラズマという微生物が肺に感染しておこる病気です。定型的な細菌による肺炎と違って比較的軽症であることが多く、胸部レントゲン像も異なっているために「異型肺炎」と呼ばれたりしました。近頃は「異型肺炎」の病名は使われなくなっています。また、マイコプラズマ肺炎は、かつては4年周期でオリンピック開催年に大きな流行を繰り返してきたため、「オリンピック肺炎」とも呼ばれていました。しかし最近はこの傾向が崩れてきていて、2000年以降その発生数は毎年増加傾向にあります。
マイコプラズマは肺炎の原因としては細菌に次いで多く、病原体の正式名称は肺炎マイコプラズマ(Mycoplasmapneumoniae)と呼ばれています。マイコプラズマはウイルスよりは大きく細菌より小さい微生物なのですが、生物学的には細菌に分類されています。しかし他の細菌と異なって細胞壁を持たないので、ペニシリン、セフェムなどの一般的な細菌に効果を示す抗菌薬は効きません。
一般に年間で人口の5~10%が罹患すると言われています。晩秋から早春にかけて多くなり、幼児から成人まで幅広い年齢層でかかりますが、学童期・青年期によくみられ、7~8歳にピークがあります。罹患したすべてのヒトが肺炎になるわけではなくて、風邪症状だけで自然に治ってしまう方がほとんどですが、一度罹っても十分な免疫ができないため、何回も罹ることがあります。潜伏期間が2~3週間と長いですので、家族内感染や幼稚園や小学校内で小規模の流行をきたします。
最も特徴的な症状は咳で、ほとんどすべての患者さんに認められ、夜間に頑固で激しい咳が現れます。発熱も必発で、全身倦怠感も見られますが、あまり重症になることはありません。時に発疹が見られることもあります。また、マイコプラズマ肺炎に、普通の細菌による気管支炎や肺炎や気管支喘息を合併することや、中耳炎、副鼻腔炎などを合併することもあります。
マイコプラズマの診断は、ちょっと難しいです。一般的な血液検査では診断がつきにくく、現在は、LAMP法という検査がもっとも正確な検査と言われています。これはマイコプラズマに特徴的な遺伝子を直接検出する高感度の検査法です。また、LAMP法より精度は低いですが、咽頭スワブ(ぬぐい液)からイムノクロマトという方法で迅速診断することができるようになりました。この検査も採血の必要はなく、簡単で検査結果はすぐわかります。今後はこの二つがマイコプラズマ肺炎の主流な検査となっていくと思います。
確実に診断することはなかなか難しいのですが、年長児のマイコプラズマは比較的わかりやすい症状を呈しますので、経過を診ながら、上述した検査や胸部のレントゲン撮影を行って確定診断します。
マイコプラズマに効く薬はマクロライド系と言われる抗菌薬です。よく使用されるのは、エリスロマイシン、クラリス、ジスロマックという製品ですが、最近このマクロライド系の抗菌薬に効かないマイコプラズマ肺炎が2000年あたりから増えてきました。原因はいろいろ推察されていますが、マクロライド系の抗菌薬の使い過ぎもあるようです。
マイコプラズマ肺炎は、肺炎という名が付いていますが、あまり重症となることは少なく、多くは外来治療で治ります。しかし、マクロライド系の抗菌薬が無効であったり、合併症があったりすると入院が必要になることもあります。発熱が続く時はもちろん自宅安静が必要ですが、解熱して1~2日たてば登園・登校して良いと思います。ただし、しつこい咳が続きますので、激しい運動は控えた方が良いと思います。診断書や許可証の提出は必要ありませんが、その判断はかかりつけ医に相談してください。
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