事故・ケガ 子どもの病気 教えて!ドクター
我が国の喫煙率は先進国の中では高い率ですが、最近は減りつつあります。しかし、男女ともに子育て中の若い人の喫煙者が多いので、子どもへの影響について考えてみてください。
タバコの煙には本人の吸いこむ主流煙のほかに、火元からの副流煙、さらに喫煙者の口や鼻から吐き出される呼出煙があります。非喫煙者がこれらの煙を吸わされることを受動喫煙と言います。これらタバコの煙の中にある200種類以上の有害物質や60種類以上の発がん物質を子どもに吸わせることは、子どもの発達や健康に大きく影響します。
医学的に受動喫煙との関わりが明らかになっている子どもの病気でも特に知ってほしいのは、中耳炎、喘息発作、気管支炎、乳幼児突然死症候群、発育障害、知能発達障害、注意欠陥多動症候群などがあります。
乳幼児がタバコを食べてしまって小児科外来に飛び込んでくるケースは小児科医なら皆経験することです。小児の誤飲事故の中でタバコによる事故が毎年とても多いのです。これは畳の上の生活と若い世代の喫煙率が高いということによる日本特有の現象です。
タバコの中にニコチンは、一本に12〜20 ㎎含まれ、これは小児の致死量以上です。ただ、症状が発現するのは30分以上であり、催吐作用により吐き出すので重篤になることが少ないのです。しかし、飲物の空き缶を灰皿代わりにしていると、ニコチンが液体に溶けている場合、飲むと吸収が早く、重大なことになります。成人でも痙攣などが引き起こされます。子どもの手の届くところにタバコや灰皿を置くのはもちろんいけません。子どものいる家はすべて禁煙室です
火事の原因は放火や暖房器具などが多いのですが、子どもが関係する火事ではライターによる火災があり、増えています。
喫煙者のいる家には平均5〜6個のライターがあると言われています。子どもだけで留守番をしていて、家にあるライターで遊んでいるうちに周りの物が燃えてしまうのでしょう。年齢では3歳前後で男の子が多いようです。
そのため、ライターを子どもが使えないように操作法を変えるという試みもありますが、そもそも子どもの手の届く所に置くことの方が問題でしょう。
マンションのベランダで喫煙する人をホタル族と言って久しいですが、最近はそれも問題になっています。窓を開けていると近くのベランダからタバコの煙が入ってきてしまう副流煙の害で、近隣トラブルになってしまうのです。副流煙を避けて窓を開けられずに我慢している家もあるでしょう。上の階のタバコの吸い殻で、干していた布団が焦がされた被害もあります。
さらにベランダで吸ってから、すぐに家に入ってきて子どもを抱くと、呼出煙を子どもに吹きかけることになります。吸い終わってからベランダで5回以上深呼吸をして肺の空気をきれいにしてから部屋に戻ってほしいです。
車の中で一本でもタバコを吸うと中の空気はすごいことになります。PM2.5は子どもを外で遊ばせない基準の70㎍ /㎥よりはるかに多い800㎍ /㎥にもなります。これは窓を開ければ大丈夫ということにはなりません。後ろの席の方が濃度は余計に高くなるからです。
米国や豪州では子どもが乗っている車での喫煙を条例で禁止している都市があるほどです。
部屋の壁やカーテンなどに沁み込んだ残留タバコ煙を吸うことを、三次喫煙と呼びます。誰もいない喫煙所の中が嫌な臭いになっているので理解できますね。化学物質過敏症の人は具合が悪くなります。レンタカーに乗ると具合が悪くなる子どもの場合、車のシートに染みついた残留タバコ煙によることもあります。レンタカーを予約する時はチャイルドシートと一緒に禁煙車とリクエストしましょう。
歩行禁煙地域や禁煙の場所が増えてきていますが、喫煙所もあちこちにあります。そこで問題になることが、喫煙所に子どもを連れて入る人がいることです。高濃度の受動喫煙となりますので、「未成年者は喫煙所に入室禁止」とする掲示が待たれます。
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