日本脳炎 予防接種 子どもの病気 教えて!ドクター
日本脳炎は、日本脳炎ウイルスに感染している豚を刺したコガタアカイエカが、人間を刺すことによってうつる感染症です。突然の高熱、頭痛、嘔吐などで発病し、意識障害や麻痺等の神経系の障害を引き起こします。日本脳炎ウイルスに感染した場合、およそ100〜1000人に1人が脳炎を発症し、発病すれば1/3は死亡し、1/3は知的障害や運動障害などの重篤な後遺症に苦しみ、1/3だけが回復すると言われています。医学医療の発達した現在も、根本的治療法はありません。しかしワクチン接種により、罹患リスクを75〜95%と、大幅に減らすことができます。
私が生まれた昭和23年には、一年に4757人の患者が出て、2620人が亡くなりました。幸い、ワクチンの普及や上下水道の完備、家屋構造の改善などで患者の報告は激減、平成4年以降の患者報告数は、年間10名以下となりました。しかし、目を世界に向けると、現在でも、中国、インド、ベトナムなどを中心に、年間約5万人が発症し、およそ1万人が死亡しています。感染しても発症しない人はかなり居るのではないでしょうか? 私は、7〜8年前に、東京の葛飾にある私の医院で0歳から90歳までの50人の患者さんの連続血清を使って、どのくらいの方が知らない間に日本脳炎にかかっていたかを調べたことがあります。その結果、全体の4%に当たる2名の方が、既に日本脳炎になっていたことがわかりました。また、日本の豚の50〜80%には、日本脳炎の抗体があります。(この抗体保有率は蚊の分布状態を反映して、南部に高く北部に低い傾向があります。)このことから、日本の豚の大半は、知らない間に、この病気にかかっていることがわかります
いいえ、中止となったことは一度もありません。しかし、平成17年5月30日に、「積極的勧奨の差し控え」という勧告が厚生労働省から出たことはあります。これは、当時、マウスの脳から作っていた日本脳炎ワクチンが重症のADEM(急性散在性脳脊髄炎)の発生に関与している可能性が示唆されたこと、ならびに、当時、既によりリスクの低いと期待される組織培養法によるワクチンが開発中であったことからの措置でした。この通知により、国は、平成17年度から平成21年度まで、日本脳炎の予防接種の積極的な案内を行いませんでした。その結果、日本脳炎ワクチンの接種率は大幅に低下し、平成7〜18年度に生まれた方は、日本脳炎の予防接種率が不十分になりました。
本来は、定期接種の日本脳炎ワクチンは、2期の12歳までに、全部で4回の接種をすべて完了することになっています。しかし、「積極的勧奨の差し控え」で接種機会を逃した方々を定期接種の対象とするため平成23年5月20日に予防接種法施行令等を改正し、平成7年6月1日から平成19年4月1日までに生まれたお子さんについては、従来、『生後6月から90月及び9歳以上13歳未満』だった接種期間を、20歳未満までに延長しました。また、平成25年度より、平成7年4月2日〜5月31日生まれの方にも、20歳未満までという同様の延長が行われました。該当するかもしれない方や、日本脳炎ワクチンが、まだ4回済んでいない方は、かかりつけのお医者さんや、居住地の自治体の予防接種を担当している保健所などの担当部署に問い合わせすると良いでしょう。
日本脳炎ワクチンは、生後6ヵ月から受けられます。しかし、多くの資料には標準的接種期間は3歳からとなっています。平成25年3月改訂版の日本脳炎ワクチンに係るQ&A(厚生労働省)を見ると平成18年以降に報告された小児例6名のうち1歳が2名、3歳が1名であったとされています。この子たちは、生後6ヵ月から、日本脳炎ワクチンをしていれば、この病気になることはなかったでしょう。実際に日本脳炎の患者の治療に当たったことがある筆者は、特別な治療法がなく、その半分以上が亡くなったり重い後遺症を残したりするこの病気に対するワクチンは、蚊が飛ぶ夏を迎える前に、早く打っておいた方が良いと考えています。
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