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食物アレルギーについて

アレルギー 子どもの病気 教えて!ドクター

(2015年 春号 掲載)

乳児の食物アレルギーの大部分は、「食物アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎」からはじまります

食物アレルギーと診断される乳幼児は5〜10%いると報告されています。原因となる食品は鶏卵、牛乳、小麦の順に多く、その3つで60%〜70%を占めます。食物アレルギーというと、ある食品を食べるとすぐに蕁麻疹が出たりすることが思い浮かぶと思いますが(これを即時型アレルギーといいます)、症状の割合としては10%以下なのです。90%以上はアトピー性皮膚炎の症状ではじまり、「食物アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎」といいます。皮疹がなかなか治らないので病院を受診して食物アレルギーがあると診断されることが多いのです。また、医師の診断なしに「なんとなく」除去していることも多いのではないでしょうか。食物アレルギーの治療は〝原因食物の必要最小限の除去〞なのですが、そのためには正しい診断が必要になります。

食物アレルギーは
アレルギーマーチのはじまり

アレルギー症状が皮膚や気管、鼻粘膜と体の場所を変えて発症することをアレルギーマーチといいます。必ずしも順番が決まっているわけではないのですが、そのような流れでアレルギー症状を起こすお子さんが多いのは確かです。その最初の症状は「食物アレルギーの関与したアトピー性皮膚炎」からはじまるといってよいでしょう。

食物アレルギーのお子さんは、その後ダニやハウスダストといった吸入アレルゲンの影響を受けやすく、気管支喘息やアレルギー性鼻炎の発症も多いのです。最初にしっかり治療することで、それから出てくると予想されるアレルギー症状が出にくくすることが期待されます。

食物アレルギーを疑ったら、
必ず医師による診断を受けましょう

食事の後に蕁麻疹などの症状が出たりした時は勿論ですが、なかなかよくならない皮疹で食物アレルギーを疑った場合は、必ず医療機関を受診しましょう。アトピー性皮膚炎の場合は、必ずしも食べてすぐ症状が出るわけではないので、原因となる食物(アレルゲン)を診断するのは難しいのです。

アレルギーを起こしそうで怖いといって何種類もの食品を自己判断やまわりのひとに言われたからという理由で勝手に除去して、栄養不足や成長障害を起こした例はたくさんありますので注意してください。

確実な診断には
除去・負荷試験が必要

食物アレルギーが疑われた食品は、離乳食および授乳している場合はお母さんの食事も含めて2週間その食品を食べない除去試験を行います。その食品が原因である場合には、2週間の除去試験で皮膚症状が改善します(除去試験 陽性)。その後に母乳を介して負荷試験を行って皮疹が再び悪くなるかを確認します。乳児本人に対しては強い即時型反応が出ることが考えられるのですぐには行いません。通常は1歳を過ぎてから行います。

離乳食の進め方

離乳の開始自体を遅らせる必要はありません。アレルギーを起こしにくいものから開始し、すでに原因と診断されたアレルゲン以外はその月齢で摂取するのに適した食物はできるだけ多くの種類を食べるようにしましょう。母乳へ出るんぱく質の量は母親が摂取した量の10万〜100万分の1程度ですから、授乳中の母親が制限するのはたいてい卵だけで大丈夫です。バランスのよい食事をこころがけま しょう。

加工食品のアレルギー物質の
表示の見方

お店で販売されている加工品のパッケージには、裏のラベルに原材料としてアレルギー表示が義務づけられています。左上の表に示される特定原材料7品目とそれに準ずるもの20品目の計27品目です。購入されるときは、ラベルの表示を確かめましょう。ただし、注意が必要です。

表示されるのは27品目に限られます。

表示が義務化されているのは、あらかじめ容器包装され表面積30㎠以上の加工食品だけで、店頭販売される食品やファーストフード店の販売品には表示義務はありません。

理解しにくい表記がありますので注意しましょう。

〈理解しにくい表記例〉

乳糖:本当の意味で乳糖はタンパク質でないので抗原性はないのですが、牛乳を原材料として作られているため、牛乳成分が微量含まれます。

ホエイ:牛乳から乳脂肪やカゼインを除いた水溶液ですので、牛乳成分を含みます。ホエイパウダー(乳)のように書かれることが多いです。

ラクトグロブリン、カゼイン:牛乳のタンパク質の種類ですので、牛乳アレルギーの方は避ける必要があります。

卵殻カルシウム:表記されるのは未焼成卵殻カルシウムであり、微量の卵タンパク質の混入はありますが、通常は症状を起こさ ずに摂取可能です。

レシチン:乳化剤として使用されます。大豆や卵黄から作られます。

いつまでも除去食を続けない
— 除去食解除する前には負荷試験を行います —

1歳を過ぎると、消化機能も腸管免疫も発達してくるので、原因食物を食べてもアレルギー症状が出にくくなってきます。お子さんだけでなく、ママにとっても除去食は心身ともに負担になります。いつまでも除去食を続けず、症状が落ち着いてきたら除去を卒業することも考えましょう。その際も勝手に食べることはせず、かかりつけの医師に相談してください。残念ながら、なかなか除去をやめられないお子さんもいます。「そろそろいいかな」と食べさせて 全身蕁麻疹や※アナフィラキシーになり医療機関を受診するケースは多いです。

※短時間で全身に激しい症状が出ること

あせらず、上手におつきあいをしていくつもりで
— かかりつけ医はコーチ役 —

食物アレルギーは、子ども自身が成長すれば自然に治っていくことが多いものです。治療のゴールは症状を起こさずに食べられるようになることですが、アレルゲン以外の食物は食べることができます。ごはんを主食とし、野菜や魚、肉をバランスよく食べる和食はご家族みなさんにお勧めです。加工食品やインスタント食品・調味料はできるだけ避け、新鮮な食材を使って料理しましょう。定期的にかかりつけ医を受診し、相談したりアドバイスを受けたりすることはとても大切です。お子さんひとりひとり、ゴールまでの道のりは全員違います。かかりつけ医をコーチとして、あせらず食物アレルギーと上手におつきあいしていく感覚で治療していきましょう。

[画像の拡大]

小島博之先生

東小岩わんぱくクリニック(東京都江戸川区)院長。千葉大医学部卒業。医学博士。千葉大医学部小児科、国立病院機構下志津病院等勤務を経て平成17年から現職。日本小児科学会専門医、アレルギー学会専門医。自身も小児期から喘息・アトピー性皮膚炎で苦しんだ経験から小児アレルギー医を志す。クリニックは江戸川区・葛飾区に系列として5つあり、病児保育も行いグループで子育て支援に力を注いでいる。

小島博之

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