子どもの病気 教えて!ドクター
「くる病」は、子どもの成長軟骨のカルシウム(Ca)およびリン(P)不足で、骨が柔らかくなります。成人では「骨軟化症」と呼ばれます。日本では第二次世界大戦(1939~1945年)後の極度の栄養不足時期にみられましたが、食料事情の改善とともに減少し、過去の病気と思われていました。ところが最近「くる病」が再び増えており、背景に昨今の子育て環境の変化があります。変化とは、不適切な食生活、食物アレルギー対応の誤解、ゲーム等で室内中心の生活や紫外線の過度な恐怖による日光浴不足です。
ほね(骨)は、脊椎動物の骨格を構成する硬い組織で、身体を支えます。家にたとえると「柱」のようなものです。軟骨は、骨(硬骨)とともに骨格を構成し、ある程度の硬さと弾力性をもち、骨と違って膨張により成長します。そして骨は、カルシウム、リン、タンパク質、ビタミンD、運動、適度の日光浴、女性ホルモン等が必要です。
くる病の発病に関係する代表がビタミンDです。食事から摂取されるほか、日光が皮膚にあたっても作られます。ビタミンDは、骨にカルシウムなどを沈着させる働きがあり、骨に不可欠です。このビタミンD不足の子どもが増加しているのです。原因は次のようなものです。
母乳はさまざまな利点がありますが、乳児期後半に適切な離乳食がなされておらず母乳のみだとビタミンDが不足します。
食物アレルギーで、いろいろな食物を避けたために、くる病になった1歳11ヵ月の男児がいました。兄が食物アレルギーでアトピー性皮膚炎もひどかったため、卵、牛乳、小麦が完全除去されていました。そして弟にも極端な制限食を行ってしまったのです。食物アレルギー児は食物負荷試験を行い、可能な限り食物制限を緩和していく経口免疫(減感作)療法が昨今の傾向です。卵は、ビタミンDが豊富に含まれる食材です。無理な場合は、代替食品を摂取するべきです。どうしても対応が困難な場合は、ビタミンDの薬を処方します。
皮膚でビタミンDを作るため、一定時間の日光浴が必要です。紫外線の有害を過剰に考えて室内生活ばかりだと心配です。両親ともネパール人で、慣れない日本に来たために、ほとんど外出せずにくる病になった1歳の男児がいました。
乳幼児で足が曲がっている(起立時にひざとひざのすき間が3㎝以上)、よく転ぶ、身長の伸びが悪い場合は、くる病を疑ってください。その場合は小児科を受診ください。下肢が異常なO脚、肋骨の変化、骨X線写真の変化、血液のカルシウムやリンの低下、血清ALPや副甲状腺ホルモンの上昇、貯蔵型ビタミンDの低下などで診断でき、治療可能です。
ゲーム中心の室内生活や治安の悪化で、屋外で遊ばない子が増えているのは心配です。
「子どもは食事・気候・生活環境の悪化の犠牲者」は言い過ぎでしょうか。「くる病」から現代社会の問題点を再考しましょう。
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