B型肝炎 予防接種 教えて!ドクター
B型肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBV)による感染症です。世界の人口70億人のうち、20億人がB型肝炎ウイルスにかかったことがあると言われています。何と3.5人に1人の割合です。現在、B型肝炎ウイルスにかかっている人も約30人に1人、2億4千万人いると言われています。
B型肝炎は主に血液を介してうつります。3歳くらいまでにB型肝炎ウイルスにかかってしまうと、多くの人がキャリアと言って、一生に渡ってB型肝炎ウイルスを持ち続けることになります。キャリアの多くは、出生時にB型肝炎ウイルスがお母さんから子どもにうつったものです。キャリアの約1割が慢性肝炎になります。
慢性肝炎は、しばしば肝硬変や肝がんに進み、命を脅かします。残りの9割のキャリアには肝炎がなくて、肝臓はほとんど正常です。ヘルシーキャリアと呼ばれますが、それでも稀に肝がんになることがあるので、キャリアは肝炎の有無にかかわらず、一生に渡って専門医で検査を受けなければいけません。
3歳以上でB型肝炎ウイルスにかかると、急性肝炎になります。急性肝炎になると、時に体がだるくなる、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)になる、などの症状が出たりします。風邪の症状に似ているので、風邪と間違われることもたびたびです。
ひどくなると(100人に1人)、劇症肝炎と言って、命取りになることもあります。3歳以上でB型肝炎ウイルスにかかった場合は、一時的な感染で、キャリアにはならずに、多くの他のウイルス感染症同様治ってしまうものと考えられてきました。
ところが、最近になり、欧米型のB型肝炎ウイルス(ややこしいのですが、遺伝子型AのB型肝炎ウイルスと言います。ちなみに日本人のキャリアのほとんどは遺伝子型BかCです。)が日本にも入ってきて、少し様相が変わってきました。欧米型のB型肝炎ウイルスにかかった場合は、1〜2割程度の人が治らずにキャリアになってしまうと言われています。
B型肝炎ウイルスは、血液の他、体液(唾液、精液、膣分泌液など)でもうつることがわかってきています。どうやってうつったのかはわからないのですが、保育園で、キャリアの職員や園児から他の複数の園児にうつってしまったという報告もあります。
幼児期にB型肝炎ウイルスにかかってしまうと、キャリアになってしまう可能性があります。それでも現在、B型肝炎のうつる原因で一番多く、問題になっているのは、性行為です。すなわち、B型肝炎には性病としての側面があるのです。実に成人のB型急性肝炎の7割は性行為が原因です。しかもいまや6割以上が慢性化する可能性のある遺伝子型Aなのです(図)。
●図:B型急性肝炎における遺伝子型Aの割合
全国調査(1982~2010)(n=1,088)
厚生労働科学研究多施設共同研究
国立国際医療研究センター肝炎・免疫研究センター他
実は、遺伝子型AのB型肝炎ウイルスは欧米型と言いながら、すっかり日本に定着してしまっています。
感染を防ぐために、性交時には、最低でもコンドームを使用する必要があります。キスぐらいではうつらないとされていますが、状況により感染することもあります。
キャリアのウイルス量が多い場合で、口内に傷などがあれば、感染の危険はゼロとは言えなくなってしまいます。B型肝炎ウイルスは、多い人では血液1mlに10兆匹以上ものウイルスを持っているのです。
B型慢性肝炎は、肝硬変や肝がんに進む恐ろしい病気ですが、B型肝炎ウイルスの増殖を抑えることのできる良い飲み薬ができ、今はたくさんのB型慢性肝炎患者さんが服用しています。これにより、B型肝炎はコントロールしやすい病気になりましたが、それでも多くの患者さんは、この薬を一生飲まなければなりません。
しかも、肝がんになるのを100%防ぐことができるわけではないことがわかってきています。残念ながら、現在の医療ではB型肝炎ウイルスを完全に退治してしまうことはできません。やはり、感染しないようにすることが一番肝腎なことなのです。
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