発熱、かぜ 子どもの病気 教えて!ドクター
これからの時期、診察をしていると、発熱、のどの痛みを訴えるお子さんばかり。下痢や嘔吐、発疹もともなうことがあります。なぜか、鼻だれ、ごほごほ、せきはありません。お母さん方は、鼻水、せきだけなら、「かぜ」ですね、と説明すると納得~(笑顔)ですが、発熱だけで「夏かぜ」と説明すると、「ただのかぜですか?」「へんな、かぜですか?」「インフルエンザですか? かぜですか?」と質問の嵐です。
ちょっと、まってください。皆さんの質問の「かぜ」という病気は、まず、どんな病気をイメージしているのでしょうか? 鼻水、せき、ちょっとした発熱ぐらいの病気でしょうか? しかし、それは「かぜ」のほんの一部でしかありません。
なぜなら、「かぜ」は、一つの病気でないからです。正確には「かぜ症候群」といいます。主に200種類以上のウイルスによって、鼻水、せき、発熱、嘔吐、下痢、発疹などの症状を引き起こしてくる病気の総称です。
しかし、一般の診療では、検査で調べられるのはほんの僅かで、ほとんどのウイルスは診断できません。そのために、「かぜ」という病名を使います。診療の際、診断として使うには便利な病名ですが、曖昧な病名でもあるので皆さんが混乱するのもうなずけます。
また「かぜ」が複雑なのは、軽い症状を含めた病名でありながら、感染症とは違う重い病気のはじまりが「かぜ」のような症状だったりすることも時々あるためです。熱が上がってのどがはれて、「のどかぜ」と思っていたら、なかなか下がらない。調べてみたら白血病だったり、熱が高くておなかが痛いので「おなかのかぜ」かと、思ったら、盲腸だったり。そのため、「へんなかぜ」という思いもうなずけます。「へんなかぜ」と「ふつうのかぜ」ではなくて、「かぜ」とはまったく違う病気を比べていたことになります。
さて「夏かぜ」はどんな病気でしょう?「のどかぜ」とも云われることもあり、高熱とのどの痛みがおもな症状です。のどの入口の口蓋垂の両脇に白いぼつぼつができてのどを痛がる「ヘルパンギーナ」、さらに手掌、足の裏の赤いボツボツが広がってくると「手足口病」と病名が変わります。発熱は数日、のどの痛みは1週間程度でおさまります。コクサッキーウイルス、エコーウイルスが原因で、何十種類も血清型があるので、何回もかかります。
ときに、発熱が持続して、髄膜炎、脳炎の中枢神経や心筋炎といった心臓に合併症を起こすこともあって、油断ができません。
夏かぜはのどの痛みが強いので、溶連菌感染症という細菌感染との区別が必要になることもあります。また、全身に発疹を認めて、麻疹や風疹と間違えられたりすることがあります。
発熱と共に目が充血してのども痛く4~5日もなかなか熱が下がらない病気に「プール熱」があります。夏場のプールで集団発生したことからつけられた病名で、原因はアデノウイルスです。目が充血する結膜炎だけの「はやり目」、発熱とのどだけ腫れる「扁桃炎」だけのこともあります。感染力が強いので、熱が下がってもさらに2日間は自宅にいてください。また、プールや水遊びをするときは、よくお尻を洗ってから入りましょう。
「おなかのかぜ」は冬のロタやノロが有名ですが、夏かぜの「アデノウイルス」や「エンテロウイルス」もおなかをこわしたり嘔吐したりもします。食中毒も多くみられる時期ですので、胃腸炎には注意しましょう。
いずれも、特別な薬はなく、症状に応じた薬を処方しますが、自宅の看病だけでも十分なことも多いので、高熱が出たからと言って、慌てず、上手にエアコンを利用して、過ごし易く安静を心がけましょう。
「冬かぜ」、「春かぜ」、「秋かぜ」がないのに「夏かぜ」だけがあるのも不思議な感じがしますね。
■日本脳炎について
夏の時期、発熱の後、痙攣が長く続いて、夏かぜかと思っていたら、日本脳炎という可能性もあります。発症してしまいますと、命にかかわることが多いです。日本脳炎は予防接種で防げますから、はやめに接種されることをお勧めします。日本脳炎は蚊に刺されて、感染しますが、人から人にはうつりません。
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