発熱、かぜ 子どもの病気 教えて!ドクター
「夏バテ」は医学的な言葉ではありません。ですから「夏バテ」の内容を医学的に説明して対応を考えることは簡単ではありません。そこで今回はちょっと昔の書物をひもといてみました。
まず「黄帝内経」です。これは紀元前四〜三世紀ごろまとめられ始めた、と考えられている中国医学の教科書です。これには夏の過ごし方の注意として、「少し遅く寝て少し早く起きるべきである。夏の日の長さ、暑さを厭うことなく、気持ちを愉快にすべきで、怒ってはならない。〈中略〉 体内の陽気を外に向かって開き通じ発散することができるようにさせる」。(東 洋学術出版社訳)とあります。 私流の解釈では「少し遅寝で早起きを。暑くても楽しくしっかり汗をかこう」。となります。
あれ、夜ふかししていいんだ、と誤解しないでください。実は最近の調査で分かったのですが、睡眠時間は誰でも夏に短く、冬には長くなるのです。さらに夏には夜ふかし早起き、冬には早寝遅起きになるのです。
夏には日の出は早く、日の入りは遅くなり、冬には日の出は遅く、日の入りは早くなりますよね。意識していなくとも、ヒトという昼行性の動物の生活は、太陽の動きに左右されているのでしょう。だから「少し遅寝で早起きを」の部分は「自然の季節変動に従いなさい」、と解釈すべきと私は考えています。
さらに「夜ふかし」の実際は2000年以上前と今とではおそらく相当に違うでしょう。2000年以上前であっても「火」を使ってはいたでしょうが、今のような明るく楽しい夜は昔にはありませんでした。昼行性の動物であるヒトの生活の基本は、日の出と日の入りでした。江戸時代後期の家庭の医学書「病家須知」にも「夜は早く寝て、朝は日の出前に起きるのがよい」とあります。
「病家須知」には夏の過ごし方については特に書いてありません。夏の過ごし方について具体的に書いてあるのは「養生訓」です。「養生訓」は江戸時代に書かれた健康増進のためのハウツー本です。「養生訓」の夏の過ごし方についての基本的な考え方は、「夏は外が陽なので身体の中は陰となっている」です。
外部から病気のもとが入りやすいので、涼しい風に当たるな、特に風呂上がりは。消化力も低下しているから食べ過ぎ飲み過ぎに注意、温かいものを食べ、冷たい水は飲むな。冷たい麺も食べ過ぎるな。冷たい水で顔や手足を洗うな。寝ている間も風に当たるな。夜も外で過ごすな。とかなりうるさく注意しています。
ただこれらはあくまでハウツーものです。大切なのはお子さんの最も身近にいるお父さんお母さんがお子さんの様子を見て、お子さんが元気に過ごす方法を見つけてあげることでしょう。
ハッピー・ノート ドットコムが「暑さに負けるな!夏バテ対策」と題してリサーチをしてくださいました。そのリサーチには「子どもの夏バテ対策として気をつけていることは?」という設問があったのですが、その答えは以下の通りでした。
●夜間の十分な睡眠(64.8%)
●帽子や日焼け止め、長袖など紫外線対策(61.0%)
●日中の外出は避けるなど無理をしない(56.3%)
●食事の栄養バランスを工夫する(50.7%)
●アイスなど冷たいものを食べすぎない(46.0%)
●お昼寝をする(45.1%)
これらはどれもとても大切なことで、その通りと思います。きっと多くのお父さんお母さんは、近くでお子さんをみていて、このようにすることでお子さんが夏も元気に過ごした、と感じてお答えくださったのでしょう。ただ、これらが誰にもすべて当てはまるはまるわけではないことには注意が必要で す。
私は最近「身体の声に耳を傾けて」と強調していますが、お父さんお母さんがお子さんの様子をよく見て実感してくだされば、それが「身体の声に耳を傾けて」いることになるのです。この〝あなた〞のお子さんに対する実感がなにより大切です。
お子さんの、そしてお父さんお母さんご自身の身体の声に敏感であってください。これこそが夏を乗り切る、いや夏ばかりではありません。子育てを楽しむ時に何より大切なことと感じています。
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