感染症 子どもの病気 教えて!ドクター
発熱して医療機関を受診すると多くの人が「カゼですよ」と診断されることが多いと思います。では、小児科医は、どのようなことに注意して診察しているのでしょうか。
まず、発熱の原因を考える時に、カゼの症状を「咳の出るカゼ」と「咳の出ないカゼ」に分けます。咳の出るカゼは、上気道炎から下気道炎などをおこす病原体があげられ、咳の出ないカゼは咽頭・扁桃炎を起こす病原体を考えて診察します。
同じ病原体でも年齢やアレルギー性鼻炎の有無で症状が異なることは、よく経験します。
6ヵ月未満の赤ちゃんでは、お母さんの臍帯を通して病原体の抵抗力を持っていることが多いので、発熱や症状が軽いとされていますが、鼻腔スペース・気管支などが狭くできているので、チョッとした分泌物でも呼吸苦が起こります。
アレルギー性鼻炎のある年長児では、鼻カゼでも症状が強く長引くこともよく経験します。
流行している病原体は通園・通学施設・地域や季節によって異なります。そのため、病原体の流行を早く発見し、周知することも、地域の小児科医の大切な仕事です。
医療定点では、病気のお子さん方からいただいた検体を、地方衛生研究所に届け、培養法、遺伝子学的検査法(PCR法)などを用いて病原体を特定することもあります。
病原体の中には、医療機関で、迅速診断キットを用いて特定できるものがあります。
現在、用いられているものとして、インフルエンザ、RSウイルス、アデノウイルス、溶連菌、ロタウイルス、ノロウイルスなどがあります。
迅速診断は、集団感染が認められたときに簡便に診断ができ有効な対策を講じることができることも事実ですが、すべての病原体を必ず診断できるわけではありません。
迅速診断法は、病原体に反応するタンパクを用いて、病原体に反応してラインができ、目で判定できるようにしてあります。ラインの濃さは病原体が多ければ多いほど短時間で強く出ますが、少ないと陰性(偽陰性)になります。病原体があれば必ず陽性となるわけではないのです。
逆に病原体がないのに陽性に見えることもあります(偽陽性)。この原因として、「診断をつけよう」とする心理的因子、目で判定するための個人差があげられ、その誤差は約5%弱と考えています。一般的には流行の初期に偽陽性が、終焉期に偽陰性が増える傾向にあります。
原因がつかめなかった時には、症状とお子さんの状態に乖離がないか? 必要であれば白血球数や炎症性タンパク(CRP)などで、ウイルス性なのか細菌性なのかを判断して治療をしていきます。
大切なことは病原体の診断をつけることではなく、お子さんの状態がどうなのか・今、必要なことは何なのかを医師とご家族が共通の認識を持つことです。必要でない検査・薬・治療はお子さんに過大な負担となります。待つこと(wait and see)も大切な治療法だと考えてください。
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