お母さんになると、お子さんが、何かにつけて吐いたり下痢をしたりすることを経験するでしょう。こういう胃腸炎には、家で休ませて様子を見ればよいものから、小児科受診が必要なものまであります。
絶対に小児科受診が必要なのは、便に粘液や血液が混じっている場合と、激しいおう吐ではじまり、白っぽい色をした水の様な便がたくさん出る場合です。
後の原因として一番多いのがロタウイルスです。ロタウイルス胃腸炎には、だれもがかかります。軽くすむ場合の方が多いのですが、中には脱水症状が強く、適切な治療を受けなければ、生命にかかわる場合もあります。けっしてあなどれない病気です。
今年から、日本でも、ロタウイルス胃腸炎が「ワクチンで防げる病気」の仲間入りをしました。
ロタウイルス胃腸炎に対して2つのワクチンがあります。
1つはグラクソスミスクラインという製薬会社が作っているロタリックスというワクチン(2011年7月に製造販売承認取得)で、もう1つはMSDという製薬会社が作っているロタテックというワクチンです(2012年早々に承認取得予定)。
どちらも生ワクチンでポリオワクチンのように口から飲ませます。ロタウイルスワクチンは現在20カ国以上で乳幼児の定期予防接種に組み入れられ、毎年、1000万人を超える乳児がロタウイルスワクチンを飲んでいます。
ロタウイルスワクチンは子どもがロタウイルスに感染し、病気になって、免疫ができる様子をまねて作られました。
感染後にできる免疫がどんなものか研究した結果、子どもは繰り返し感染していることがわかりました。
しかし、感染を繰り返すたびに、症状が軽くなっていくこともわかりました。だから、ワクチンの目的は、本物のウイルスに感染してできる免疫でも防げないような感染そのものを予防することではなく、感染しても胃腸炎が軽くすむようにできる免疫をつけることによって、子どもが入院したり死亡するのを防ぐことなのです。
ワクチンにどれだけ予防効果があるかをみるために、臨床試験が行われました。その結果、重症のロタウイルス胃腸炎の発生を9割以上抑えることがわかりました。
実際、ロタウイルスワクチンを定期接種に導入した米国やブラジルなどでは、ロタウイルス胃腸炎で入院する乳幼児が激減しています。
■ ロタウイルスワクチンのインパクト
10年以上前のことですが、米国ではロタシールドと名づけられたワクチンが使われました。
ところが約1万人に1人の確率で腸重積症(腸の一部がさらにその先の腸の中にもぐりこむ乳児期に多い病気)を起こすことがわかり、接種は中止されました。そこで、ロタリックスもロタテックも大規模な安全性試験を行い、ロタシールドのような確率では腸重積症を起こさないことを確かめて市販されました。
ただ、その後の追跡調査によれば、数万人に1人くらいの非常に低い確率で腸重積症を起こす可能性があるということです。つまり、リスクはゼロではないということです。ワクチンをしなければ、最低でも40人に一人の確率でロタウイルス胃腸炎の治療のために入院しますから、効果と副反応のリスクを比べれば利益は明瞭です。
ロタウイルスワクチンで大切なのは、生後2ヵ月から始めて、2回(ロタリックス)または3回(ロタテック)の接種を6ヵ月までに終了させることです。
世界の多くの国では、生まれたときにBCG(結核予防ワクチン)を接種し、生後2ヵ月からはジフテリア・破傷風・百日咳の3種混合ワクチンに加えて、肺炎球菌ワクチンとヒブ(インフルエンザ菌b型)ワクチンを同時に接種します。このときに、ロタウイルスワクチンも同時に飲ませています。
このような接種スケジュールはよくよく注意しないと、チャンスを逃してしまいます。ロタウイルス胃腸炎は、生後半年以降、急に増えます。ワクチンは病気にかかる前に接種しないと効きませんから、生後半年以内に接種を終了させることは合理的なのです。
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