禁煙 ママの病気・健康 教えて!ドクター
WHO(世界保健機関)が本格的にタバコ対策に乗り出したのは、女性事務局長グロ・ハーレム・ブルントラント(Gro Harlem Brundtland)さんの時代(1998~2003年)です。
WHO事務局長になった時の就任演説で、「タバコは殺人者」“Tobacco is a killer. ”という有名な言葉を使い、タバコ対策をWHOの重要な使命と位置づけました。ブルントラントさんは小児科医でもあり、その演説の中で、「タバコの害に対して子どもが最も脆弱で、習慣性は若いときに始まり、タバコ産業はそのことを知っていて行動する(子どもを狙う)」と述べ、タバコ対策には、子どもを守るのがなにより大事であることを強調しました。
また、WHOは、女性をタバコの害、タバコ産業から守ることにも力を注いでおり、2010年の世界禁煙デーのテーマは「ジェンダーとたばこ~女性向けのマーケティングに重点をおいて~」でした。“Gender and tobacco with an emphasis on marketing to women”
タバコを止められなくなる最大の原因である「ニコチン依存症」は、喫煙開始年齢が若ければ若いほど、そして男性より女性喫煙者ほど短期間で始まり、そして離脱できなくなるのです。
米国では、12~13歳を対象群として、月喫煙者(月に1回でも喫煙する)になってから、どれくらいの期間でニコチン依存症の症状が現れるかという研究(2002年)が行われています。最初の1本の喫煙から月喫煙者となるまでが平均486日、しかしそれからが早く、ニコチン依存症の症状が現れるまでは、男子で中央値が183日、女子ではなんと21日でした(中央値というのは、100人対象者がいた場合、50人目に症状がでるまでの期間です)。
2010年、インドネシア(世界一の喫煙大国)から衝撃的な映像が世界に向けて送られました。2歳の男の子が喫煙する姿でした。 「タバコは嗜好品」「吸ってる大人は格好がよい」そんな言葉がタバコ産業の虚言でしかないことを、一番良く現わしている映像だったのではないでしょうか。まさに「(タバコに)吸わされている」姿でした。大人の喫煙者であっても、同じように「吸わされている自分」の姿を客観的に眺める機会になったのではないかと思います。
スモーカーズフェイス(喫煙者顔貌)という言葉があります。女性は短期間でニコチン依存症に陥り易いだけでなく、男性より喫煙の害が外見に現われやすいという二重に不利な条件を持っています。10年後、20年後の自分の姿を想像したとき、実は、今が止め時であることに気がつくのではないでしょうか。
妊娠中の禁煙補助剤による治療は禁忌とされていますが、止めたいという強い動機が働くため、薬剤無しで半数以上の方が禁煙に踏み切ることができます。授乳中も薬剤は使いにくいですが、お子さんのことを考えれば、禁煙するには最も重要な時期です。
禁煙外来がお近くにあればそこで相談し、もしなければ、かかりつけの小児科医が相談に乗ってくれることと思います。お子さんの健やかな成長のためにも、まずあなたの周りからタバコの無い社会作りを始めましょう。
「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約(英語略称、FCTC)」はWHOが主導した公衆衛生分野における初の国際条約です。FCTCは2005年2月27日に効力が発生し、2011年1月末現在、世界の172の国と地域が加わっています。もちろん日本も国会で承認し、条約を守る義務を国として負っています。WHOは毎年5月31日を世界禁煙デーとしてタバコ対策を進めています。
Copyright © 2011 Mikihouse child & family research and marketing institute inc. All rights reserved.
この記事にコメントしよう