性感染症 ママの病気・健康 教えて!ドクター
子宮頸がんという病気をご存じでしょうか。日本では1年に15000例発生し、約3500例が死亡しています。1995年以降、日本においては20代、30代の若年女性の子宮頸がん発生数、死亡数の増加がみられ、それぞれの年代において最も頻度の高いがんとなっています。
その理由は、この世代の女性の子宮頸がん検診受診率の低さにあります。子宮頸がん検診の存在や認識が理解されておらず、検診の受診率が20歳代ではわずか3%、30歳代でも10%に満たないのです。
海外の先進国では学校で子宮頸がん検診の重要性が教育され、大人になれば皆が受けるものと認識している女性がほとんどです。子宮頸がん受診率は、欧米のほとんどの国で70〜80%以上であり、中南米諸国で60%以上、台湾、韓国でも40%以上に達しています。
子宮には体部という子宮の上方にできる子宮体がん(40%)と頸部という下方にできる子宮頸がん(60%)の2種類のがんがあり、この二つは全く異なるがんです。子宮体がんはおもに閉経期以降に起きるがんで、発生には女性ホルモンが関係しています。
一方、子宮頸がんの発生にはヒトパピローマウイルス(HPV:human papillomavirus)というウイルスが関係しており子宮頸がんのほぼ100%がHPV感染が原因であることがわかっています。
がんの原因というと、タバコとか生活習慣などが想像されると思いますが、子宮頸がんのようにその原因が明らかに特定され、自然史(病気の成り立ち)が解明されているがんは他にありません。
HPVは「いぼ」の原因になるウイルスで100以上の型に分かれますが、そのうち15種類が子宮頸がんなどの原因になるハイリスクHPVです。ハイリスクHPVの代表がHPV16および18でこれらが子宮頸がんの原因の70%を占めます。
子宮頸部におけるHPV感染は特別な感染ではありません。HPV感染がこの頃、急に増えてきたと勘違いされる方がいますが、昔から普通の人にありふれて存在するものです。女性の80%は生涯に一度はHPVに感染することが明らかになっており、非常にありふれたものです。
たまたま、持続感染になった場合にのみ、5〜10年以上の前がん状態(異形成)を経て子宮頸がんが発生します(HPV感染からがんに進行する割合は1/1000程度)。
子宮頸がんの原因がHPVであることがわかった現在、その予防には、一次予防(病気を発生させない)であるHPVワクチンと二次予防(病気を早期に発見し治療する)である検診が重要でかつ有効なツールであることが世界中で認識されています。本当の意味で唯一「予防できるがん」が子宮頸がんです。
2006年6月に子宮頸がんを予防するためのHPV16および18に対するワクチンがアメリカで承認され、2007年4月、オーストラリアでの12歳女児に対する学校での無料接種が始まり、現在、ほとんどの先進国では9〜16歳の女児(一部では男児にも)に公費での無料接種が行われています。
イギリスでは、テレビやインターネット、携帯サイトで中学生女子に対する無料接種のキャンペーンビデオが流れています。日本でも、ついにこのHPVワクチンが承認されます。12月には接種が可能になるでしょう。
12歳の女児全員にHPV16、18ワクチンを接種すると、子宮頸がんが70%減少すると試算しています。一方、子どもたちの集団に比べると有効性は低下するものの、医療経済学的に検討すると45歳までの女性では費用対効果の点で有用です。
子宮頸がんは、ワクチンでその70%を予防し、残りを検診で予防することができるのです。ワクチンは子どもたちへの接種で将来の子宮頸がん発生を予防します。大人の女性は検診を受けることによって前がん状態を発見し、がんになる前に(子宮を取ることなく)治療することができます。子宮頸がんがゼロになる日を目指して、ワクチンと検診の普及を願っています。
多くの女の子たちの将来の夢は「お母さんになる」ことです。そのための大切な健康教育は大人になる前に「HPVワクチン」、大人になったら「子宮頸がん検診」。ぜひ、家庭での正しい教育をお願いいたします。
※平成25年6月現在、子宮頸がん予防ワクチンの接種を積極的にお勧めしていません。接種に当たっては、有効性とリスクを理解した上で受けてください。Copyright © 2011 Mikihouse child & family research and marketing institute inc. All rights reserved.
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