夜泣き・夜尿症 子どもの病気 教えて!ドクター
最近私は夜ふかし朝寝坊で生活が不規則なお子さんほど、問題行動が多いことを見出しました。また世界中からも夜型の生活が子どもたちに悪影響を与えることが報告されています。でもなぜ夜ふかし朝寝坊はよくないのでしょうか?
ヒトは朝起きて、昼間に活動し、夜に眠ります。体温は朝が一番低く、午後から夕方に高くなり、新陳代謝に関わる成長ホルモンは夜寝入って最初の深い眠りに一致して分泌され、眠気等に関わるメラトニンは朝目が覚めて14〜16時間して夜暗くなると分泌されます。
このようにおおよそ1日の周期で変化するヒトのリズムは脳内の視交叉上核にある生体時計で生まれます。ただ生体時計の1日は大多数の方で24時間よりもやや長いので、毎日生体時計のリズムを早めて、地球時刻と合わせる作業(リセット)が重要です。この作業をしないと時差ぼけと似た状態となって、体調は不良となります。
そして生体時計の地球時刻へのリセットに何よりも大切な刺激が朝の光です。大多数のヒトは朝の光を浴びることで、24時間より長い生体時計の1日を短くして、地球の1日である24時間に合わせています。逆に夜の光は生体時計の1日を長くして、もともと生体時計と地球時刻との間にあるズレを拡大させます。さらに夜の光が生体時計の働きを止める可能性も指摘されています。
朝の光は神経伝達物質セロトニンの働きを高めます。セロトニンの働きが下がると精神的に不安定となり、気分が滅入り、攻撃性や衝動性が高まり、社会性が低下します。セロトニンの働きはリズミカルな筋肉運動(歩行、咀嚼、深呼吸)で高まりますが、時差ボケと似た状態ではこのような運動はできません。
眠気をもたらし、酸素の毒性から細胞を守る抗酸化作用をもつメラトニンは夜でも明るいと出ません。ところが昼間にたっぷりと光を浴びると、夜暗くなるとたくさん出ます。余談ですが、メラトニンの抗酸化作用は抗がん作用とも言われますが、最近夜勤をする方で発がん率が高まる可能性も報告されています。
このように夜ふかし朝寝坊が、時差ボケと似た状態、低セロトニン状態、さらには低メラトニン状態をもたらし、その結果子どもたちの心身に厄介な問題を生じさせことが心配です。
では夜ふかし早起きならどうでしょう。この場合は寝不足になります。寝不足では認知能力やひらめきが悪くなり、肥り、風邪をひきやすくなり、生活習慣病(高血圧、糖尿病等)関連の変化が子どもにも生じ、精神機能や気分にも悪影響がでます。ただある方のある日の必要な睡眠時間は何時間である、ということはまだできません。
では必要な睡眠時間はどうやって決めたらいいのでしょう。その際のヒントは、ヒトという動物の覚醒度が最も高い時間帯は通常午前10〜12時で、午前4時と午後2時前後には覚醒度は低くなるという研究成果でしょう。つまり午前10〜12時に眠気がなければ、その方の眠りの量、質、生活リズムに大きな問題はないと考えてよい、と思います。
ただし1歳代の赤ちゃんではまだ午前寝をする場合もあります。2歳以降の方ならば午前中の様子で、眠りの量、質、生活リズムの良しあしを判断してよいでしょう。
最後に成長ホルモンについて一言。名前は「成長ホルモン」ですが成長にだけ大切なわけではありません。新陳代謝に深く関わり、大人にも大切なホルモンです。「眠ると成長ホルモンが出る。成長は子どもに大切。だから眠りは子どもに大切。でも大人は眠りをいいかげんにしてもいい。」は間違いです。眠りは子どもばかりではなく、ヒトという動物にとって大切な営みです。
子どもには眠りが大切、と言いながら、大人が夜中もネットサーフィンでは、子どもたちはいつか夜ふかしをしてやろうと、虎視眈々と狙うばかりです。ぜひとも大人自身が眠りの大切さを本当に理解して、早起き早寝を実践してください。それはお父さんお母さんにもとても大切な生活習慣なのですから。
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