嘔吐・下痢 子どもの病気 教えて!ドクター
「点滴」とは、正式名は「点滴静脈内注射」で血管に針を刺して水分や薬などを体内に時間をかけて入れていく治療です。皮膚に針を刺しますので痛いのですが、なぜか日本人は「点滴を」「注射を」と求める傾向があります。痛くされるのが好きとは思いませんが、「良薬は口に苦し」「すぐに効果が」「一番効く」のイメージなのでしょうか。点滴は医療機関を受診しなければ無理です。下痢・おう吐はすぐ点滴が必要のイメージから逃れ、まずは自宅で経口補水を試しませんか! これが世界の流れです。
下痢とおう吐があれば胃腸炎が考えられますが、原因はウイルスがほとんどです。病名はウイルス性胃腸炎もしくは乳幼児おう吐下痢症で、一般には「吐く風邪」とも呼ばれています。ウイルスで多いのはノロ、ロタ、アデノです。細菌性は少なく、細菌性食中毒が中心です。
下痢・おう吐での問題は、胃液や腸液に含まれている水分や塩分が失われる脱水症です。過度の発汗(高熱の持続、熱射病)でも脱水症になります。脱水症になりますと、ぐったりしたり、尿の量や回数が少なくなったり、泣いても涙が出なかったり、唇・口の中が乾燥したりします。
脱水症で失われた水分・塩分の補給に適している液体が「経口補水」と呼ばれるものです。この液体は「生命の水」とも呼ばれ、開発途上国のコレラなどひどい下痢の重症の脱水症から命を救っています。米国ジョンズ・ホプキンス大学病院の調査で脱水症で入院した子どもの89%が点滴せずに経口補水で治ったと報告しています。点滴でなく、まずは経口補水療法をしましょうなのです。
経口補水には医薬品(ソリタT顆粒)、病者用食品(オーエスワン)、一般食品(アクアライト)などがあります。経口補水を飲まれると塩辛いと感じられると思いますが、それは健康な状態のためで、塩分(NaCl)が失われている脱水状態では、むしろ飲みやすいです。スポーツ飲料水では塩分が少なく、失われている塩分が十分に補充されません(表1)。
経口補水は下痢だけの場合はすぐに与えてよいですが、おう吐もある場合は、2〜3時間後に、おう吐が落ちつくか止まった頃から始めましょう。一度に多量を飲ませると再び吐くことがありますので表2を、飲ませる目安量は表3を参考にしてください。経口補水がうまく進まない場合はかかりつけ医にご相談ください。
子ども達の小児科医の前での口癖「注射する?」「注射いや!」ももっともです。経口補水の開発により子どもの要望に答えられるようになっています。下痢止めで腸内に微生物を居座らせて悪化する事、おう吐を止める鎮吐薬のショックや他の病気を見逃す事、細菌性でないのに抗菌薬の乱用で腸内細菌叢が乱れ下痢が長引く事などの薬剤の悪影響を避ける医療が、そして安易に点滴を要求しないことが子どものためになるのです。
下痢・おう吐は救急車でなく、まずは自宅常備の経口補水液で対応すれば回復に向かうことが多いのです。保護者が仕事を休まずに自宅で解決できることにもなりますので一度お試しください。
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