感染症 子どもの病気 教えて!ドクター
RSウイルスはインフルエンザウイルスと並んで、毎年、冬季に流行する呼吸器感染症の代表的な病原ウイルスです。RSウイルスはすべての年齢層に感染し、生涯に何度でも感染を繰り返すという特徴があります。2歳までに、すべての子どもが少なくとも1度はRSウイルスに感染すると言われています。インフルエンザウイルスが主として、ノドを中心とした上気道を感染の場とするのに対し、RSウイルスは、初めは上気道の粘膜に感染しますが、そこから容易に下気道(肺)へ感染が波及し、細気管支炎と呼ばれる喘息に似た症状が現れます。
RSウイルス感染症で特に注意しなければならないのは、この細気管支炎症状が早産児、先天性心疾患・慢性肺疾患・免疫不全といった基礎疾患を有する赤ちゃん、さらに高齢者において重症化しやすいということで、人工呼吸器の使用など集中治療が必要となることも少なくありません。それだけにRSウイルス感染で重症化しやすい集団を、いかに感染から守るかが重要な課題となります。
RSウイルス感染の潜伏期間は2〜8日と幅がありますが、多くは4〜6日です。ウイルスの主な侵入ルートは目と鼻です。RSウイルス下気道炎の最も一般的な症状は細気管支炎及び肺炎です。
感染当初は発熱、鼻汁、咳などの上気道症状が現れます。RSウイルス感染で入院した子どもの約半数は感染初期に38度以上の発熱を呈し、2〜7日間持続します。発熱は初感染時に多くみられますが、再感染時でも20〜40%の子どもにみられます。
咳は下気道に炎症が進展すると激しくなり、細気管支炎に至ると呼吸困難症状を伴うようになります。これらの下気道炎症状は治療により1〜2週のうちに自然軽快しますが、中には人工呼吸器を使用する重症例も見られます。特に早期産児や先天性心疾患・慢性肺疾患のある赤ちゃんでは重症化しやすいです。
RSウイルス感染症の診断にとって、「冬季」、「乳幼児」そして「細気管支炎」が3つのキーワードになります。診断の確定はベッドサイドでも簡便に実施でき、短時間で判定が可能な迅速診断キットにより行ないます。
RSウイルスに対する抗ウイルス薬は現在開発途上にあり、根本的な治療法はありません。そこで、RSウイルスによる呼吸器感染症の治療は、もっぱら症状を軽減する治療法となります。
RSウイルス感染に対するリスクが高い赤ちゃんに対しては、パリビズマブ(商品名シナジス)の投与で感染予防が可能です。
※RSウイルスとはrespiratory syncytial virusの日本語名で、ヒトの呼吸器(respiratory)細胞に感染して合胞体(syncytium)を形成することからこのように呼ばれています。
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