発達障がい 子どもの病気 教えて!ドクター
最近、私たちの小児の発達・神経を専門とする外来には、運動発達は気にしていないけれど、「言葉が遅い」「かんしゃく」「落ち着きがない」など心配だと受診されることが、増えている印象があります。
ただ、だからといって日本中でこのような症状を示す子が増えているという証拠があるわけではありません。むしろ、今までどこにかかっていいのか分からなかったためではないかと考えられます。私が子どもの頃(昭和30〜40年代)にもクラスには、落ち着きがなく勉強が苦手でよくけがをしたりした子が、運動会や球技大会ではクラスの代表になったり、まねできないような素敵な絵を描いていたことを思い出します。みんな自分の特徴に自信を持つ場面がどこかにあるのが小学校生活であったのではないでしょうか。
2003年の調査では全国の小中学校で、この領域に該当すると思われる子どもは約6.3%存在すると考えられています。40人学級に換算すると、1クラスにこのような特徴を有する子どもが2〜3人存在することになります。
子どもはみんな、個性豊かに、誰一人として同じ人はいない存在としてこの世に生まれてきます。コミュニケーションは苦手でも、運動が得意な子もいれば、音に対して絶対音感を持っていたり、豊かな色彩感覚を持っていたり、様々な存在感を示しているのではないでしょうか。
軽度発達障害という用語は昨今話題になり、よく耳にしますが、ここで用いられる「軽度」は脳性麻痺など「見てわかる」症状を示す発達障害に対し、「気づきにくい」あるいは「気づかれにくい」発達障害ととらえるために用いられています。しかし「軽度」を「軽い」という意味に解釈して、「軽い」障害ならば、子ども自身がもう少しがんばれば克服できるのではと誤解されることが指摘されるようになりました。
この誤解を避けるために文部科学省は2007年3月22日に学校教育法施行令の一部改正の中で、発達障害者支援法における「発達障害」の定義に準じ、学習障害(LD)、注意欠陥/多動性障害(AD/HD)、高機能自閉症( アスペルガー症候群)を「知的な遅れのない発達障害」とし、従来使用されていた「軽度発達障害」という用語は用いないことになりました。
軽度発達障害児とは一般的な発達を示す子どもに比べて社会の中で様々な心理的・行動的問題を示すことはあるものの、そのこと自体は疾病とみなされるものではなく、社会の理解と配慮を必要とする「個性」と認識することです。
保護者はどうすればいいでしょうか。たとえば、かんしゃくを起こしやすい子どもの場合、保護者は日ごろからかんしゃくを起こさないよう、気を配る必要はあります。しかし、禁止の言葉はできるだけ少なくする一方、かんしゃくを起こされるとわずらわしいから、子どもに譲ってしまうことは絶対に避けるべきです。
「前もって」各々の子どものレベルに応じた約束事を親子で一緒に作り、一緒に守るという姿勢が重要です。ほめるポイントはそこにあります。約束を覚えていたらほめる。約束を守れたらほめる。子どもにとって、まとわりついていたいお父さん、お母さんに、自分の特徴(個性)を否定されるのではなく認められのだったら、こんなにうれしいことはないのではないでしょうか。
よい関係が構築された子どもたちの目は輝いています。その輝きをみるのは本当に嬉しいものです。これは「軽度発達障害」に限らず、子どもを育てること全般に共通することです。
(注)「障害」とつく病名は「妨げになるもの」という漢字の意味、あるいは「害」の漢字からも、使用されない方が少なくありません。「しょうがい」「障碍」と様々な表現を目にしますが、ここでは便宜上「障害」の用語を使用させていただきます。
【学習障害】
基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する、または推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を示すもので、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されますが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境要因などが原因となるものではないと定義されます。
【注意欠陥/多動性障害】
年齢あるいは発達に不釣合いな注意力、または衝動性・多動性を特徴とする行動の障害で、社会的な活動や学業の機能に支障をきたすもので、7歳以前にその特徴が現れ、その状態が持続すると定義されます。中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定されています。
【高機能自閉症】
他人との社会的関係の形成の困難さ、言葉の遅れ、興味や関心が狭く特定のものにこだわることなど自閉症の特徴が3歳くらいまでに現れるのですが、知的発達に遅れがない(IQ70以上)と定義されます。中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定されています。
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