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アレルギーとは何か?を考える

アレルギー 子どもの病気 教えて!ドクター

(2008年 春号 掲載)

アレルギーを学問的に定義すると、いろいろと細かい約束ごとがあるのですが、今はいったんそれらをすべて忘れて、毎日数多くの子どもたちを診療している第一線の町医者の立場で考えてみます。

アレルギーとは

人の体には本来、「なじまないもの」を拒絶しようとする働きが備わっています。人はそれによって長い間、なじんだ食物や環境の中で、健康に安全に暮らすことができました。

アレルギーとは、なじまない(有害かもしれない)食物や環境に対してアラームを鳴らして警戒させる反応であり、なおかつ、体に入った「なじまないもの」を外に追い出そうとする反応です。

アトピー性皮膚炎の浸出液、気管支喘息の咳や痰、花粉症の鼻水や涙、食物アレルギーの嘔吐や下痢など、不快な症状を出すことによって、人をその環境から逃げ出す(改善する)ようにさせ、また、その症状自体が体に入ってしまった「なじまないもの」を外に出す反応と考えると理解しやすくなります。

それでは、アレルギーは体にとって好ましい反応でしょうか?そうとばかりは言えません。アレルギーが病的なのは、本来は拒絶しないでもよいものまでを、異常なほど強く拒絶しようとするからです。その原因こそまた、「なじまないもの」の増加と「なじんできたもの」の不足によって、体の正常な機能が狂わされることによります。まるで悪循環しているようです。

アレルギーの増加

ここ数年アレルギーは急速に増えています。それは、人がかつて遭遇したことがないような数多くの「なじまないもの」すなわち、化学物質やそれの混じった食物、水、空気、土、かつて経験のないような心のストレスなどが、どんどん身の回りに増えており、反対に、今まで「なじんできたもの」すなわち、脂、糖分、刺激物の少ない和食、その中にたっぷり入っているビタミンやミネラルなどの栄養素、十分な休息と心の平安が急速に失われつつあるからです。

アレルギーを克服するには

私は患者さんに「アレルギーは根治させることができません。症状が出ないように、環境や食事に気をつけ、ゆっくり休養してください。そして時にはお薬を使いながら、症状を抑えてください。」と申しあげています。

例えば、卵、牛乳、ハウスダストがアレルギーの原因の一つと特定できたとします。でも、それらを完全に除いてもアレルギーは根治しません。それらを完全に除くことは非常に難しく、仮に除けたとしても、他にも気がつかない原因がいっぱいあるからです。

逆に、原因のものが少々体に入ったとしても、それを処理できるだけの能力があれば、アレルギーは起こりません。「なじまないもの」の総量が、体が処理できる能力を超えた場合に、アレルギーが起こるのです。

アレルギーは生まれ持った体質であり、まず、それを認めることから出発します。そして、「なじまないもの」や体に悪いと考えられるものは極力除去あるいは遠ざけるようにします。そして、「なじまないもの」が体に入ってきても、それを処理できるように、「なじんできたもの」や体によいものを十分取り入れて体調を整えます。

そのような努力をした上で、なおかつ症状が強ければ、それを抑えるために一定の期間、ステロイド剤や抗アレルギー剤など薬の助けを借ります。

アレルギーを上手に利用する

アレルギーを不快なだけのものと考えると腹が立ち、何とか取り除きたいと思うでしょうが、時にはそのアラームに耳を傾けてみてはいかがでしょうか。

アレルギーの子どもが出す症状に注意した生活をしていると、悪いものから遠ざかり、体によいものだけを取り入れることになり、結果的にアレルギーがない人まで健康になれます。それは究極的には、カゼなどの急性疾患やガンなどの生活習慣病の予防につながるのです。

山手智夫先生

やまて小児科・アレルギー科( 山口県光市)院長。医学博士、小児科専門医。1988年岡山大学医学部卒業後、アメリカ合衆国ダラスの臨床環境医学センターで、生活環境からみたアレルギーの対処法について学んだ後、2004年に開業。5人の息子と2人の孫あり。
http://yamate-cl.jp/(やまて小児科で検索)

山手智夫

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