事故・ケガ 子どもの病気 教えて!ドクター
あなたのお子さんが思いがけず「全身麻酔をかけて手術をしないといけません」と言われたら本当にびっくりすることでしょう。「全身麻酔は危なくないの?」とか「麻酔の後で頭がおかしくなったり、何か後遺症が起きたりしないの?」とか今までに考えたこともなかった心配事や心細さがドッと噴き出してくると思います。
でも、ちょっと待ってください。もし手術をしないといけないなら、ケガをした部分の局所麻酔をして、メスやハサミやらが行き来するところで、おとなしく我慢していられるでしょうか?小学校の高学年のお子さんなら、それでも我慢できるかもしれません。どうして手術をしないといけないか理解できない小さいお子さんなら、恐怖で泣き叫ぶでしょう。
手術の間、痛みも感じない、眠っている間に丁寧で繊細な手術ができる全身麻酔はあなたのお子さんにとって頼りになる大きな味方なのです。
全国どこの病院でも全身麻酔は麻酔科やその指導の下で行われているのが普通です。麻酔の先生といわれている人達は、医師免許を持った上、麻酔を専門とすることを国から資格として与えられています。全身麻酔とは手術や検査を可能にするよう、麻酔薬により一時的に意識や呼吸や循環など命を支えている器官をコントロールしています。薬によって意識や痛みをとっても、安全に前の状態に戻す蘇生が毎日の仕事ですので、麻酔科医は全身麻酔に対して、どの科の医師よりもよく知り尽くしていると言えます。
全身麻酔をかけることは、お子さんの呼吸や循環(血圧や脈拍など)に大きくかかわってきます。麻酔薬は呼吸と共に体の中にとり込まれて作用したり、血管内に麻酔薬を注入して、全身麻酔として力を発揮するからです。
子どもが大人と大きく異なるのは、その予備力が小さいことです。分かり易く言うと、呼吸や循環の安全性のたくわえが少ないということです。麻酔薬の影響によって、大人よりも変化が激しく、短い時間に危険に陥りやすいのです。子どもの麻酔は単に子どもが小さいというだけでなく、大人に比べてより細かい観察と対応が必要なのです。
それでも、全身麻酔が必要になったからといって、取り乱したり、あわてる必要はありません。安全な麻酔を受けるために大事なことは、お子さんの日ごろの状態、例えばアレルギーをもっているか、風邪を引きやすいかなど、麻酔を担当する医師に正確に伝えることです。
子どもの呼吸をする空気の通り道(気道)はとても細いため、風邪症状があるかないかは大事な情報になります。また、最後に飲んだり、食べたりした時間もしっかり伝える必要があります。胃の中に食べたものが残っている場合は、嘔吐したものが肺に入らないように注意して麻酔をかけますが、知らずに全身麻酔をかけると胃の内容物が肺に入り、肺炎を起こし、大変なことになってしまいます。
麻酔をやることが決まった場合は、手術直前の数時間は、むやみに水分などは与えない方がいいでしょう。
現在は呼吸や循環の状態を細かく観察できるモニターを用い全身麻酔はとても安全になりました。全身麻酔は専門の医師が安全を心がけながら行っている限り、けっして恐ろしいものでなく、怖がることもないのです。
お子さんの心のケアも考えながら、今日も麻酔科医は頑張っています。
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