感染症 子どもの病気 教えて!ドクター
「36年ぶりに国内で狂犬病患者が死亡」のニュースに、驚かれた方も多いでしょう。人が犬をはじめとするペットや野生動物とどのように接するべきかを解説します。
狂犬病は、犬あるいは人が予防接種することにより予防できます。今回の事故は、フィリピンで予防接種を受けていなかった日本人が、予防接種をされていなかったため狂犬病ウイルスに感染していた犬にかまれ、狂犬病を発病し不幸な結果となったのです。狂犬病は死亡率ほぼ100%の悲惨な病気で予防対策が重要で、日本では狂犬病予防法により飼い主は毎年飼い犬に狂犬病ワクチンを接種することが義務付けられています。しかし2005年度の接種率はなんと75%以下であり法律が十分に守られておらず、野良犬や登録漏れの犬も多く、実際は50%未満と推測されています。
この事故をきっかけに飼い主は狂犬病予防法を守り、同居する家族そして屋外での他人への予防対策を行い、ペットと安全な関係を作ってほしいと思います。
一方、図1のように世界は狂犬病が蔓延しており、年間5万人以上が死亡していますので特に蔓延地域での長期滞在や動物との接触が避けられない場合は渡航前に予防接種を受けて出かけましょう。
万が一、予防接種をしておらず動物にかまれた時はすぐにワクチン接種し発病を阻止することが必要です。
狂犬病は、主に発病動物にかまれ、唾液中に排出される狂犬病ウイルスが傷口より体内に侵入することにより感染します。感染源の動物は、先進国では主に野生動物で、北米ではリス、アライグマ、スカンク、キツネ、食虫コウモリなど、ヨーロッパではアカギツネなど、発展途上国では犬や吸血コウモリなどです。私は米国留学中にアパートの近くや大学のキャンパス内でリスをよく見かけましたが、現地の人から「かまれることがあるので、むやみに近づくな」「安易にえさを与えるな」と注意されていました。特に海外では、かわいいからといって野生動物に無防備に近づくのは慎みましょう。
動物由来感染症とは動物から人間へうつる感染症をいいます。「人畜共通感染症」、「人獣共通感染症」「ズーノーシス」などとも呼ばれています(図2)。
代表としては、狂犬病、猫からのネコ引っ掻き病(リンパ節がはれ、発熱)、鳥(オウム、セキセイインコ、ハト)からのオウム病(肺炎)、カメ等のハ虫類からのサルモネラ胃腸炎など。また、蚊が媒介をする日本脳炎などでしょうか。
特に胎児への影響が心配される妊娠中の女性や抵抗力の弱い赤ちゃんは気をつけましょう。ペットへの口移しの給餌は注意しましょう。また人間同様ペットも可能な限り予防接種を励行し、そして清潔にしてあげる心がけが求められます。
怖がってペットを避ける必要はありませんが、正しい知識を持ってお互いに病気をうつしあわないようにしましょう。また農林水産省の輸入禁止(狸、猿)、輸入検疫、輸入届出などのルールも守りましょう。生き物を大切にする習慣から命のすばらしさや愛する心を持つお子さまを育てるとともに、同じ地球でお互いを知り人間と動物の正しい共存に努めましょう!
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