こころ・疲れ ママの病気・健康 教えて!ドクター
Q 産後2カ月頃からいつも体がだるく、病院を受診したら「甲状腺がはれている」と言われました。どんな病気ですか?
A 甲状腺は、蝶が羽を広げた形の約15グラムの小さな臓器で、のどぼとけの下にあり、甲状腺ホルモンを作っています。甲状腺ホルモンは、体の代謝や精神活動などを活発にする重要な働きをしています。
出産後の女性は、約20人に1人という高い頻度で、甲状腺の機能異常が現われます。頻度が高いのは橋本病の悪化です。
橋本病は、本来は自己を守るためにはたらく免疫系に異常を生じて、自己に対して免疫反応を起こすことによる慢性の甲状腺炎です。全女性の約10%に見られますが、検査しないとわからないため、見過ごされたまま妊娠・出産を迎えることも少なくありません。
妊娠中は、免疫系が胎児を異物とみなすことのないように、母体の免疫反応が抑制されます。その結果、橋本病の炎症も鎮静化します。出産しますと、免疫抑制がはずれ、リバウンドで橋本病の炎症が激しく悪化し、甲状腺が腫れ、甲状腺が破壊されます。
甲状腺が破壊されますと、貯えられていた甲状腺ホルモンが大量に血液中に放出され、甲状腺ホルモンが過剰になり、暑がり・発汗過多・体重減少・食欲亢進・いらいら・手の震え・脈が速いなどの症状を引き起こします。
しかし、破壊によって甲状腺ホルモンの産生は低下するため、甲状腺ホルモン過剰状態は長くは続きません。数ヵ月後には、甲状腺ホルモン値は自然に減少し、正常化あるいは減少しすぎることで、甲状腺ホルモン不足に陥ります。
甲状腺ホルモンが不足しますと、無気力・疲れやすい・寒がり・皮膚乾燥・脱毛・浮腫・声がれ・便秘などの症状が現われます。
治療は、甲状腺ホルモン過剰は一過性のため、通常は経過観察です。甲状腺ホルモン不足には、甲状腺ホルモン剤の内服を行います。
産後の肥立ちが悪い・育児ノローゼなどと思われている中には、甲状腺の異常が原因である場合が少なくありません。出産後に体調不良が続く場合は、甲状腺専門医の診察を受けましょう。
バセドウ病
甲状腺を刺激する自己抗体(TSHレセプター抗体)によって、甲状腺ホルモンの産生分泌が過剰になる病気です。眼球突出などの合併症を生じることもあります。出産後に発病する例も少なくありません。症状が似ているため、出産後の橋本病の悪化は、バセドウ病と誤診されることが多いのです。が、バセドウ病では、橋本病の悪化と異なり、数ヵ月で自然に機能が正常化ないしは低下することはありません。治療は、一般的には甲状腺ホルモンの合成を抑える薬剤を内服します。
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