発達障がい 子どもの病気 教えて!ドクター
自閉症スペクトラムは3つの発達のかたより(「3つ組」)を持つ脳タイプのことです(本誌秋号、参考図書1)。自閉症スペクトラムのもうひとつの特徴に「感覚のかたより」があります。
自閉症スペクトラムでは、呼びかけには無反応な一方で、寝ていても小さな物音で目を覚ます、好きなCMは耳ざとく聞きつける、特定の音を嫌がる、といった音への鈍感さや過敏さがみられることがよくあります。
聴力とは別の、音への反応の個性的な様子を「聴覚のかたより」といいます。
聴覚のかたよりも苦手や苦痛の原因になるだけではありません。メロデイをすぐに覚える、エンジン音で誰の車が帰ってきたのか言い当てられるといった好きな音の聞き分けや記憶の高さは長所でもあります。音への鋭敏さを趣味や職業に活用している人たちもいます。
聴覚以外にも、触覚(布・水・粘土・砂など特定の手触り・肌触りをとても好む/嫌がる、服のタグが当たるのを嫌がる、特定の食感のものをとても好む/嫌がる、など)、視覚(回るもの・光るものなど特定のものを眺めるのが好き、水平方向から/横目でなど特別の眺め遊びをする、など)など、どんな感覚にもかたよりをもつ場合があります(参考図書2)。
子どもの感覚のかたよりを知ることで、不機嫌の原因に気付いてあげやすくなりますし、トイレット・トレーニングや偏食への対応のヒントも得られます。
自閉症スペクトラムの子どもの多くは次のような長所をもっています。これらを生かせば親子ともども達成感のもてる育児が可能になります。
●見て気づく・見て納得する・見て覚えるのが得意です
●予想と違ったり不意打ちだと怒ったり固まったりしやすいけれど、見通しがもてて納得できればとてもがんばり屋さんです
●好きなことには高い集中力や知識欲を発揮します。これを教材やご褒美に使えば意欲を引きだすことができます
●パタン的な記憶(具体的な記憶)は得意で、覚えたことは人一倍まじめに取り組みます
言葉の遅い子にはたくさん話しかけてと以前はよく言われていました。でも自閉症スペクトラムの子どもでは言葉掛けは簡潔に、見てわかる情報を添えて伝えるほうが適しています。
例えば「みかん」という言葉を知らない子どもがいたとします。大人がみかんを渡すたびに「みかん」と簡潔に言ってあげれば、パタンで覚えるのが得意な子どもたちですから「目の前のこれ(意味)」と音(言葉)はセットになっていきやすいです。
でも「みかんよ、おいしいね。栄養あるからいっぱい食べて。静岡のおばあちゃん、送ってくれてよかったね」と話しかけられたら、目の前にある「これ」の名前がどの音なのかなかなか学ぶことができません。みかんの名前が「静岡」だと間違ったセットを作ってしまう場合すらあります。
のべつまくなし話しかけるより、確実に伝わる(難し過ぎて伝わらないことは今は言わない)ことが大切です。
ここでは言葉掛けを例に挙げましたが、落ち着きのなさや切り替えの苦手なども発達の特徴に適した方法で育ててあげることが大切です。その方法が手に入れば、あなたの育児はもっと楽しくなるはずです。
参考図書1 吉田友子著「高機能自閉症・アスペルガー症候群 『その子らしさ』を生かす子育て」(2003年、中央法規)
参考図書2 吉田友子著「あなたがあなたであるために-自分らしく生きるためのアスペルガー症候群ガイド」(2005年、中央法規)
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