発達障がい 子どもの病気 教えて!ドクター
自閉症スペクトラムは育て方の失敗や経験の不足でなるものではありません。脳のタイプにもとづく発達のかたよりです。同じ自閉症スペクトラムの子どもでも、発達のでこぼこの様子はひとりひとりずいぶん違った印象を与えるものですが、その奥にある発達のかたよりかたは共通していて、3つの特徴に整理されます。その3つの特徴をセットにしてウィングの「三つ組(みつぐみ)」と呼びます。「三つ組」は知能障害とは別もので、実際、過半数の人たちが知能の遅れをともなわない、高機能自閉症スペクトラムの人たちです。「三つ組」は以下のとおりです。
①社会性の質
相手の感情や場の空気を自然に感じ取ることが苦手で、友だちへの関心は乏しいか、あっても一方的になりやすい。社会的判断力が身につきにくい、など。
②コミュニケーションの質
知っていることばと実際の会話能力にギャップがあり、独特の話し方(コピー的な言い回し等)がみられる場合もある。指さし・うなずき・視線・表情など、話しことば以外の手段で会話を補うことも乏しい、など。
③イマジネーションの質・柔軟性の発達の苦手
ものごとの本質・さまざまな可能性・いきさつや結果など、実際に見ていないことを直感的に感じとったり味わったりすることが苦手で、予想外のことで混乱しやすく、細かな違いが受け入れにくい。こだわり(興味の偏り・決め事)やその場のパターンを作りやすく、ごっこ遊びの発達には遅れや独特さが示される、など。
典型的な自閉症の人から「一見、普通」にみえる人まで、「三つ組」はほんの少しずつの違いで連続的につながっています。スペクトラム(連続体)上にいるからといって必ずしも全員が医療や福祉の対象になるわけではありませんが、「三つ組」があることがわかっていれば個性を生かす育児のしかたが見つけやすくなります。
「空気が読めない」「一方的」と言えば弱点ですが、裏を返せば「常識にとらわれない」「人の思惑で右往左往しない信念の人」ということです。裏のない話し振りが信頼されたり、押しの強い話術がセールスに貢献したり、微妙にポイントがずれた誠意あふれる話し振りが癒し系と言われる人もいます。イマジネーションの特徴は特に大きな長所です。「興味が偏る」「融通が利かない」と言えば弱点ですが、「自分の好きなことへの集中力・知識・向上心は人一倍」「パターン的/具体的な記憶は得意」「納得すれば真面目、努力家」ということもできます。
「三つ組」は治すべきものではなく、生かすべきものです。「三つ組」を長所として伸ばし、なおかつ「三つ組」のために不都合がおきないワザを「三つ組」を活用して教えていく。それが自閉症スペクトラムの育児の基本方針です。具体的なポイントは次号でお伝えします。「高機能自閉症・アスペルガー症候群『その子らしさ』を生かす子育て」(中央法規)もご参照ください。
Copyright © 2011 Mikihouse child & family research and marketing institute inc. All rights reserved.
この記事にコメントしよう