インフルエンザ 予防接種 教えて!ドクター
インフルエンザも風邪の一種、風邪対策をインフルエンザにも応用しましょう。風邪ウイルスは、気道(空気の通り道)や消化管の粘膜に感染します。気道からウイルスを追い出す反応が「くしゃみ・鼻水・咳」、消化管から追い出す反応が「嘔吐・下痢」です。風邪症状は免疫反応です。
くしゃみ・鼻水・咳・嘔吐・下痢で追い出せないと、ウイルスは気道や消化管の粘膜下組織に侵入、次にリンパ液や血液に入り、最終的に全身の重要臓器に感染します。
ウイルスの侵入や増殖を抑えるために「発熱」します。発熱も免疫反応です。発熱で時間稼ぎして、その間にウイルスを処理する二種類の免疫を作ります。
粘膜下組織のウイルスは食細胞に取り込まれ、感染性や病原性に関係する「抗原」が切り出され、食細胞表面に提示されます。その抗原情報を「ヘルパーTリンパ球」が受け取り、免疫を誘導します。1つは「抗体」でウイルスに結合して処理します。もう1つが「キラーTリンパ球」で、抗体で処理不能な、細胞内感染したウイルスを感染細胞ごと処理します。結果、風邪症状は消退します。
インフルエンザは乳幼児で重症化しやすく、熱性痙攣や脱水も認められます。主にA型とB型が冬から春先に流行します。伝染力が強く、増殖も速く、感染後3日以内に発病します。くしゃみ・鼻水・咳・嘔吐・下痢では追い出せないため、いきなり発熱で始まり、抗体やキラーTリンパ球が出来るまで凌ぎます。
ワクチンで流行前に免疫を獲得するのは有用です。13歳未満は1週間以上の間隔で2回接種です。接種間隔は3〜4週間程度が推奨されています。免疫は6ヶ月程度有効なので年内に済ませておくと良いでしょう。
感染力のある弱毒化されたウイルスを使用する生ワクチンでは抗体とキラーTリンパ球が同時に獲得できます。しかし、現行のインフルエンザワクチンは不活化ワクチンのため抗体しか獲得できません。抗体は細胞間のウイルスを処理して感染拡大を阻止しますが、ウイルスが細胞内に感染すると無効です。また、乳幼児は2回接種でも成人より抗体価の上昇が良くないことが知られています。
現在、使える抗ウイルス剤は2種類で感染細胞の拡大を防ぐ薬です。キラーTリンパ球の標的を減らして、ワクチンの最大の弱点を補います。抗ウイルス剤は、キラーTリンパ球が新たに出来るまでの時間稼ぎをします。
乳幼児のインフルエンザ対策も「ウイルスを入れない、入ったら追い出す」という感染防御が第一です。「人ごみを避け、部屋を換気する」ことで暴露を減らします。「うがいや手洗い」も大切です。「マスクや蒸しタオルで鼻や口に湿気を確保」して鼻詰まりと口呼吸を回避します。腸でウイルスを増やさぬよう「便秘を避ける」ことも重要です。水際作戦として「流行前にワクチンで抗体を獲得」します。かかった場合は「早めに抗ウイルス剤を使用」して感染細胞の拡大を抑え、キラーTリンパ球の負担を軽減して凌ぎます。予防接種と抗ウイルス剤でインフルエンザのコントロールは楽になりましたが、基本的な感染防御を怠ると効果も半減します。
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