健診・かかり方 子どもの病気 教えて!ドクター
「アドボカシー」という言葉をご存知ですか。アドボカシーには代弁者という意味があり、「ある考えや政策を、自分のためにうまく言い出せない人たちのために、別の人が声を大にして外部に訴える行為」と説明されています。わかりやすく言うと、「子どものように弱く発言力がない人たちに代って、一肌ぬいで仕事をする」ということです。単に奉仕をするだけではなく、その人に代わって訴える、という所がボランティアとの違いです。
昨年話題になった回転ドアの事故については、その原因が子どもの不注意でも、親の不注意でもないことが明らかになってきました。回転ドアそのものの発想や構造に原因があったのです。このことは子どもには訴えることができません。誰かが訴えないかぎり、事故が起こっても子どもや親の不注意として片づけられ、次の犠牲者が生まれてしまうのです。回転ドアの問題を訴える行為こそがアドボカシーなのです。
子どもに関係したアドボカシーは小児科医の大切な仕事です。なぜなら子どものことを最もよく知っている職業の一つだからです。米国では若い小児科医に積極的に教育されていますし、私が活動している日本外来小児科学会でも委員会ができ、活動が広まっています。子育ての相談にのってあげる、安全な通園通学路を確保するというような身近なことから、子どもをタバコの煙から守る、有害なテレビ番組から守るというような社会的な活動まで、仕事は山ほどあります。日本外来小児科学会では社会的な活動として、自己負担金のある市町村への麻疹ワクチン完全無料化の働きかけ、警視庁へのチャイルドシート取り締まり強化の要望書提出、厚生労働大臣への子どもの事故予防のための要望書提出などを行ってきました。
アドボカシーは無報酬で自発的に行うものですが、その行動を通して達成感や自己の存在感を味わえます。自己犠牲の上に成り立っているようで、結局は自分にプラスになって返ってくるように感じます。アドボカシーは小児科医だけの仕事ではありません。誰にでもできる、やりがいのある楽しい仕事なのです。小児科医と保護者の方々が手を組んで働き掛けるようになれば、子どもたちのために、より大きな力を発揮できますし、小児科医と保護者の方々の輪がもっと拡がっていくはずです。
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